元TBSアナウンサーの堀井美香(52)が音楽朗読の舞台で俳優西村まさ彦と初共演する。22年3月末のTBS退社から2年。朗読劇で新境地を切り開く堀井がインタビューに応じ、フリーで活動する近況を語った。

ドラマ「古畑任三郎」、NHK大河「真田丸」など数々の人気作で好演してきた西村との共演に胸を躍らせている。

「私の凝り固まった朗読の概念を壊してくださる方だと思います。西村さんの声も、間合いも独特で大好きです」。初のコラボでは百戦錬磨のバイプレーヤーから「読む技術」「朗読の奥義」を吸収する。

7月20日開催の「yomibasho vol.4 堀井美香音楽朗読会」(東京文化会館)では昼夜2作品を披露する。昼公演で「泥流地帯」、夜公演で「『母』小林多喜二と母セキ」を上演。夜公演の「母」は毎年単独で読み続けているが、昼公演の「泥流地帯」はゲストに西村を迎えての二人語りとなる。

治安維持法違反容疑で逮捕され、拷問死を遂げた小林多喜二の母の物語と、1926年(昭元)の十勝岳噴火の火山泥流で開拓地を奪われた農民たちが立ち上がり、復興していく様を描いた物語。いずれも、2024年の今、たくさんの人々に届けたいメッセージがあるという。

単独で朗読する「母」は小林多喜二の母の物語で映画化もされた。堀井が生まれ育った秋田を舞台にした作品でもある。

「図書館で何日も題材選びをして、たどり着いたのが三浦綾子の著書の数々でした。その中でも故郷の秋田出身である、小林多喜二の母の物語を読んだ時、その生き方や思いに懐かしい優しさや強さを感じました。長く読み続けたい大切な作品です」と語る。

退社から2年。現在も古巣TBSの番組ナレーションをこなしながら、朗読をライフワークとして活動する。演者として技を磨くだけでなく、題材選び、舞台プロデュース、交渉、宣伝まで自ら動く日々が新鮮だ。「毎日、いろいろな現場で新しい方とお会いしたり、思いもよらない仕事をさせてもらったり、常に新鮮に向き合えてます」と充実の心境を語る。

フリーになって苦労している点については「要領が悪いのに時々仕事を詰めすぎて1日24時間で足りなくなる事でしょうか…」と自己分析。一度物事に着手したら手を抜かない。真摯(しんし)な努力家の一面もにじませた。

安住紳一郎アナウンサー(50)を始め、OBの田中みな実(37)らTBS時代の仲間との交流は今も続き、刺激し合う存在だ。「今も時々集いますが、特に後輩とは、上司部下という関係性から、アナウンサーとして研さんを重ねる者同士、仲間になれた気がしています」と語る。

ベテランの西村と紡ぐ音楽朗読の舞台は、新しい自分を探す機会にもなる。語る、伝える、人の心を揺さぶる仕事に携わる堀井の新たな出発点とも重なる。「ぜひ皆さんにも、西村さんの音色を耳にしていただきたい。2人で新しい朗読を作っていけることを楽しみにしています」。まなざしは強く、りりしい。(聞き手=山内崇章)

 

◆堀井美香(ほりい・みか)1972年(昭47)3月22日、秋田県生まれ。95年TBSに入社。TBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」などに出演。22年3月退社。現在は多数のナレーションや人気Podcast番組「OVER THE SUN」を務める。1男1女の母。

 

◆西村まさ彦 富山県出身。デビュー以来多数の作品で存在感を発揮、キャリアを通じて多数の受賞歴を持ち、映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。映画では、「お終活!再春 人生ラプソディ」(24年公開予定)などに出演。

 

◆公演情報 4月7日からローソンチケットで販売。開催日時=7月20日(土)昼公演・午後1時30分開場、同2時開演、同4時終演。夜公演=午後6時30分開場、同7時開演、同9時終演。場所=東京文化会館小ホール。全席指定S席5000円、A席4000円。