東京の下町、江戸川区葛西の高齢者が「朝活」で元気いっぱいだ。イオン葛西店が今月9日から1、4階一部の開店時間を2時間繰り上げた。従来の午前9時から早朝7時に前倒しして開店すると、高齢者の客が急増した。無料参加できる体操や囲碁、将棋などを楽しみ、仲間とカフェで朝食をとるサービスがヒット。店の売り上げは前年同期比で30%増えた。外食チェーンが深夜営業から手を引く中で、シニア向けの早朝営業が注目されそうだ。

 まだ薄暗い午前7時前。1人また1人と、開店前のイオン葛西店に高齢者が集まり始めた。お目当ては午前7時15分から始まる体操教室だ。開始時間には20人が集まり、ラジオ体操や腰痛予防の体操など、30分ほど汗を流した。

 近隣に住む60代の女性は「毎日来ています。朝から運動すると気持ちいい。この後はご飯を食べて買い物。快適ですよ」と、満足そうだ。別室には囲碁を楽しむ70代男性がいた。「相手とはここで初めて対戦しました。囲碁仲間が増えるのはうれしいねえ」。同年代との新たな交流を喜んだ。

 同店は高齢者が早朝から活動することに注目して、体操や囲碁・将棋といった娯楽ができる場所を無料で提供した。イオンリテールの一海徳士(いっかい・のりひと)さんは「この世代の方にとって居心地のいい場所にしようと思いました。売る『もの』だけでなく、する『こと』に着目しました」と説明。狙いはクリーンヒットし、初日は開店まもなく約300人の高齢者が来場。11日までの3日間は、店舗全体の売り上げが前年同時期比で3割伸びた。「他のキャンペーンと比べても、かなりの効果」(一海さん)。店側とシニアの客層が、ウィンウィンの関係になっている。

 高齢者が気軽に歩いて集える場所は貴重だ。江戸川区のデータをもとに、同社が店舗を中心とした半径2キロを調べたところ、葛西店の場合は65歳以上の高齢者が約3万5600人いることが分かった。同社杉原博文さんは「特にアクティブな65~74歳までの前期高齢者が多いのが特徴。立地によって環境も違うので、場所を見極めて他店でもできれば」と展望を明かした。

 近年は、採算が合わないことから、飲食チェーンを中心に24時間営業からの撤退が続く。少子高齢化の影響で深夜に来店する若者が減少傾向にある。増えるシニア層のライフスタイルに適応したサービスに注目が集まる。【小松正明】

<「イオン葛西店」の主な早朝サービス>

 ▼朝食 4階の飲食店で午前7時から朝食営業。

 ▼ポイント 早朝の来場者に来店ポイント。4階ウオーキングコースで1000歩歩くごとにポイントが増える。体操参加者はスタンプを集めると粗品贈呈。

 ▼イベント ラジオ体操、ストレッチマシン体験、体力測定などを随時開催。