東日本大震災の発生から、今日11日で7年。津波で甚大な被害を受けた岩手県釜石市では、来年9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)に向けた準備が続く。同市は東北の被災地で唯一の開催都市で、予選ラウンド2試合が行われる「釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム」が7月末に完成する。北の「ラグビーのまち」は、希望と課題を抱えながら復興の歩みを加速させる。
前日まで降り続いた雨が上がった10日、釜石市鵜住居地区のスタジアム上空には青空が広がった。市のラグビーW杯推進室、佐々木智輝(ともあき)さん(40)が、建設現場を案内してくれた。「ここに来るたび、『少しずつ完成が近づいている』と感じる」。工事は2月末時点で87・4%(金額ベース)が完了、予定通りに進んでいる。
スタジアムは、津波で全壊した鵜住居小、釜石東中の跡地に建設されている。同中出身の佐々木さんは「昔過ごした学びやが跡形もなくなった。寂しいけど、そこが競技場になって、世界中の注目が集まるのは楽しみですね。ただ…」。大会まで約1年半、課題も多いという。
一番は、市民の気持ちの問題だ。競技場の建設費は、復興交付金なども含め約39億円。「まだW杯どころじゃない」「2試合のためにそんな大金を使うのか」など反対意見も多い。同市の三浦紘子さん(73)は「人口も少ないし高齢者ばかりの場所。W杯で盛り上がるのはいいが、その後の維持費は大丈夫なのか」と心配そうな表情で話した。
インフラ面の再建も重要だ。釜石市内では9日、大雨の影響で一部の道路が冠水。鵜住居地区では避難勧告が出た。震災の影響で地盤が下がり、毎年大雨のたびに被害を受ける家や飲食店もある。佐々木さんは「市民の方の理解も含め、1歩1歩改善しているところ」。W杯前までには、電車や高速道路などの交通アクセスは整う予定という。
だが被災地でW杯が開かれる意味は大きい。自身も市の施設で勤務中に被災、その後は避難所で市民の受け入れなどに尽力してきた佐々木さんは「本当の意味での復興はこれから。最後は“心”の部分なんです。世界中の人に支えられ、釜石はここまできた。W杯は、その感謝を伝える最高の機会なんです」。W杯はゴールではなく、再スタートの節目。釜石は、復興の歩みを着実に進めている。【太田皐介】
◆釜石市 岩手県南東部に位置。製鉄業とラグビーが盛ん。「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石ラグビー部(現釜石SW)は1978年から7年連続の日本一を達成、ラグビー史に歴史を刻んだ。東日本大震災では、県内で陸前高田市に次ぐ被害を受け、死者993人、行方不明者152人。人口3万6254人(17年1月現在)。

