「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、昨年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

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 <質問> 囲碁のあるアマチュア大会で今月末に行われる県大会に進出しました。主催者が宿泊費や交通費は負担してくれるとはいえ、泊まりがけでの大会は初めてとなります。ここまで勝ち上がることはできると思わず、ただただ舞い上がっています。落ち着いて戦う方法はありますか?(31歳 団体職員)

 <回答> いいじゃないですか。おめでとうございます。舞い上がってしまうのも分かりますが、ここは自分の思うがままにやってみましょう。

 私の経験からアドバイスしていきます。「とにかく、よく寝ましょう」。緊張から寝られないということもあるでしょうから、目がさえてしまいそうなコーヒーは飲まない。もちろん、刺激物が多く入っているカレーライスも、どんなに好きでも食べないで。

 それから「割り当てられた宿舎の部屋で不都合があったら、すぐに替えてもらいましょう」。棋士のなかには、カエルの鳴き声を我慢したのはいいが、夜通し悩まされて寝不足で負けたという例もあります。

 私も地方での対局で川の流れる音が気になって3回部屋を替えてもらいました。結果はもちろん、すべて勝ちでした。宿の庭園にある人工の滝の音が気になって3回止めてもらったこともありますが、こちらは3連敗でしたけど。まあ、自分で望んで申し出たことですから(笑い)。

 そして、対局に臨むに当たっては「負けたらどうしよう」なんて考えないこと。2500局以上対戦した私は、ただの1度も戦う前から「負ける」と思っていたことはありません。「明日はつらい相手だな」と思ったこともありません。

 みんな強そうに見えるかもしれません。「自分はできる」と、精神的に強くなりましょう。その気持ちが大事です。

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