菅原一秀経済産業相(57)は25日、安倍晋三首相に辞表を提出した。公職選挙法違反の疑いがある行為が“文春砲”で表面化。「政治家として筋が悪い」(政界関係者)問題でもあり、国会での説明直前に急転直下、安倍官邸に更迭された形。事実上の「口封じ辞任」で、野党は反発している。

菅原氏は菅義偉官房長官側近として初入閣しただけに、政権への打撃も大きい。後任には、同様に菅氏に近い梶山弘志・元地方創生担当相(64)が就任した。

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9月11日に初入閣して、わずか40日あまり。菅原氏が、詳細な説明なく大臣の座を去った。

秘書が今月17日、選挙区内の有権者の通夜で香典を手渡す様子を、週刊文春に報じられた。公選法に抵触する疑いがあり、菅原氏が抱える疑惑の中でも、致命的だった。菅原氏は辞表提出後、秘書が香典を出したと認め、「辞任はざんきに堪えない。私の問題で国会審議が停滞するのは本意ではない」と説明したが、24日に「国会で説明する」と明言したばかりだった。

舞台裏では、官邸側が菅原氏に辞任の検討を求めたとされ、事実上の更迭。「ひと晩考え、辞任は今朝決めた」。菅原氏は淡々と語ったが、野党関係者は「官邸の口封じだ」と批判した。菅原氏が出席予定だった経済産業委員会など衆院の全委員会が流会。審議を急ぐ与党の国会運営にも、思わぬ影響をもたらした。

趣味はディスコダンスという異色議員。菅官房長官に近い「菅印」の代表格で、当選6回の初入閣には、菅氏の後押しもあったとみられるが、公選法という「基礎中の基礎」(自民党議員)に抵触する疑いが浮上。野党だけでなく自民党内でも、議員辞職に発展する可能性を指摘する声がくすぶっている。菅氏は会見で「国会議員は常に、自らの行動に説明責任を果たす必要がある」と指摘した。

首相は「任命責任は私にある。国民に深くおわび申し上げる」と述べた。野党は菅原氏の説明を今後も求め、首相の責任も追及する。第2次安倍内閣発足後の閣僚辞任は、4月の桜田義孝五輪相以来、9人目。

後任の梶山氏は、菅氏が師と仰ぐ故梶山静六氏の長男。菅原氏同様、菅氏に近く、手腕に定評があり「全力で取り組みたい」と、語った。皇居での認証式は、国会議員が招かれた「饗宴(きょうえん)の儀」直後というあわただしさ。「菅原ショック」幕引きを急ぎたい政権の思惑が、にじんだ。   【中山知子】

◆菅原氏の疑惑 十数年前、選挙区内の有権者に贈る「贈答品リスト」を、事務所が作成したとされる疑いを国会で追及された。リストにはメロンやかに、みかん、たらこ・筋子などの数や贈答先が詳細に記載。公選法は選挙区内の有権者への寄付を禁じている。15日の参院予算委では、立憲民主の杉尾秀哉氏が「(菅原氏に)言われるがまま宛先を書いた」とする元秘書の証言を明らかにしたが、菅原氏はリストの存在も含めて否定した。

一方、週刊文春は、菅原氏の公設秘書が今月17日、地元東京・練馬区内の葬祭場に香典を持参したほか、事務所から故人への枕花、後援会幹部へのリンゴ発注の疑惑を報じた。