「歩きスマホ」を禁じる条例案が25日、神奈川県大和市議会で可決・成立した。全国初の条例で、7月1日、施行される。

「大和市歩きスマホの防止に関する条例」第5条で「何人も、公共の場所において歩きスマホを行ってはならない」「何人も、公共の場所におけるスマホ等の操作は、他者の通行の妨げにならない場所で、立ち止まった状態で行わなければならない」と定めた。

ドラマ「金曜日の妻たちへ」の舞台となった中央林間がある大和市は、人口密度が神奈川県で川崎に次いで第2位の過密都市。市が今年1月、調査すると、中央林間駅では11%、大和駅では13%が歩きスマホをしていた。しかし、交通安全巡視員や路上喫煙防止指導員らが注意を促そうとしても、明確な根拠条文がないことがネックになった。

この日で、緊急事態宣言解除からちょうど1カ月。駅周辺の混雑が戻る中、意識啓発を図るのが狙いだ。

本会議では反対討論で「歩きスマホの事故が多いのはホームや駅構内。駅構内を対象外としているのは理解に苦しむ」「ユーチューバーが撮影するのもダメなのか。すべて禁止というのは非常に危険な考え」などの声が出たが、採決では賛成24人、反対2人で原案通り可決した。

条例を所管する道路安全対策課の安見昌幸課長は「大変うれしい。歩きスマホによる事故を1件でも多く減らしていきたい」と話した。反対討論で挙がった懸念については「鉄道事業者もさまざまな取り組みをしており、啓発活動で協力し合いたい。時間を確認したり地図を見る時、電話をかけるときも必ず1度立ち止まってほしい。歩行しながらの通話は禁止していません」と説明した。

罰則はなく、将来的な導入も「現時点では全く考えていない」という。安見課長は「罰するのではなく意識啓発を図ることが重要。コロナでも罰則がなくても、皆さん、自粛されたじゃないですか」と話した。【中嶋文明】

◆歩きスマホ禁止条例 海外では道路横断時などに限って罰則を設けている。12年、いち早く制定した米ニュージャージー州フォートリー市は罰金85ドル(約9400円)。主要都市では最初となったハワイのホノルル市は17年、1回目15~35ドル、1年以内に違反を繰り返した場合は2回目35~75ドル、3回目75~99ドルの罰金とした。中国でも昨年、浙江省温州市が交差点、横断歩道での違反は罰金10元(約150円)にした。

◆日本では 初鹿明博衆院議員が16年、歩きスマホの法規制の是非を問う質問主意書を出し、政府は「事故の発生状況等を踏まえつつ慎重に検討すべきものと考える」と答弁している。運転中の「ながらスマホ」は昨年、「6月以下の懲役」が設けられ、罰金2倍(5万円→10万円)、反則金3倍(6000円→1万8000円)、違反点数3倍(1点→3点)と厳罰化されたが、歩きスマホに対しては政府も慎重だ。

◆大和市 神奈川県の中央に位置し、人口23万人。1平方キロ当たりの人口密度は8825人で、川崎市(1万763人)に次ぎ、横浜市(8591人)を上回る。なでしこジャパンが世界一となった11年ワールドカップ(W杯)代表の川澄奈穂美、大野忍、上尾野辺めぐみを輩出し「女子サッカーのまち」を掲げる。