自民党の石破茂元幹事長(63)が、日刊スポーツのインタビューに応じ、コロナ禍の1年を振り返った。9月の総裁選に4度目の出馬も大敗を喫し、責任を取って石破派(水月会、19人)会長を電撃辞任するなど波乱の年だった。「石破は死んだ」と、やゆされたほど政治家人生の危機に直面したが「まだ生きてます」と、来年の衆院選、総裁選へ、石破節は健在だった。【取材・構成=大上悟】

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-後手後手と批判される政府のコロナ対策について

石破氏 これをやると世の中の人々が、どう思うか、どう反応するかという想像力が恐ろしく欠けている。

-ステイホームが呼びかけられた4月、安倍晋三前首相はツイッターに自宅で愛犬を抱いてくつろぐ様子を投稿し、批判が殺到した

石破氏 総理も犬が好きなんだね、とうけて、共感もされると思ったところ、そうではなかった。国民とずれて来ちゃった。

-アベノマスクは?

石破氏 アベノマスクなるもの(笑い)は、小さいことよりも厚生労働省の名前で出すマスクなのに製造元も連絡先も書いてないことにかなり驚いた。本当に困っているところから配るべき。国会議員は1番最後。思いやりや気配りが政治に欠けてきた。そんな批判をするから「お前、後ろから弾を撃つのか」と何百回も言われてきた(笑い)。

-東京オリンピック(五輪)・パラリンピックも来夏に延期されたが

石破氏 新型コロナウイルスが変異を続けていけば、開発されたワクチンが効かないこともある。世界中の選手たちにきちんと投与されて、免疫ができて、感染が収束していること。こんな状況が開催を判断する時期まで続いているとしたらやるとか、やらないじゃ、なくて開催はできない。

-9月の総裁選は党員・党友によるフルスペックの投票ではなく、地方人気を生かせず。菅義偉氏に大差をつけられ、岸田文雄氏の票も下回った

石破氏 出ない方がお利口さんだったかも知れない。「石破つぶし」「石破殺し」とか物騒な言葉がささやかれ、こいつだけは絶対に許さんみたいな(笑い)。どうすれば石破が票を取らないのか、ということなんでしょ(笑い)。

-新たに首相になった菅氏は、石破氏が幹事長時代には幹事長代行として右腕を担っていた。

石破氏 菅さんの人柄はよく知っています。決めたことはあまりぶれず、少なくとも不誠実な人ではない。ガースーって、言ったこと? おちゃめか、どうかは分からないね(笑い)。

-派閥会長を電撃辞任し、他派閥の草刈り場と目されていた派閥だが、結束している

石破氏 ありがたいことです。「石破は終わった、死んだ」と言われましたが生きてます(笑い)。

-物言う石破茂は健在

石破氏 反対のための反対ではない。どうやって自民党が、あの野党の時に反省したことを、きちんと取り戻すか。2021年は総選挙がある。今から総裁選に出ます、というのはおかしい。だけど、ほら、生きてますから(笑い)。

◆石破茂(いしば・しげる) 1957年(昭32)2月4日、鳥取県生まれ。慶大卒。父は鳥取県知事、自治相の故二朗氏。86年衆院選で初当選。第1次小泉内閣で防衛庁長官として初入閣。防衛相、農相、地方創生担当相を歴任し、自民党幹事長や政調会長など要職も務めた。家族は佳子夫人と2女。趣味は読書、カレーライスづくり。愛煙家で日本酒とワインを好む。血液型B。当選11回。

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今年の主な政治の動き

▽1月9日 新華社通信が中国・武漢市の肺炎患者から新型コロナウイルスを検出と報じる

▽2月13日 神奈川県の80代女性が新型コロナで死亡。日本国内初の死者

▽19日 森友問題で籠池泰典被告に懲役5年の実刑判決

▽28日 新型コロナ感染拡大で北海道が緊急事態宣言

▽3月11日 WHOが新型コロナのパンデミック宣言

▽24日 安倍晋三首相(当時)が、IOCのバッハ会長と電話協議し、東京五輪を1年程度延期で合意

▽4月1日 安倍首相が布マスク配布を発表。「アベノマスク」と呼ばれる

▽7日 新型コロナ感染拡大で、7都府県に緊急事態宣言。17日に全国に拡大

▽6月18日 東京地検特捜部が河井克行元法相と河井案里参院議員の夫妻を公選法違反容疑で逮捕

▽7月5日 都知事選で小池百合子都知事が再選

▽8月28日 安倍首相が辞任を表明

▽9月14日 自民党総裁選で岸田文雄氏と石破茂氏を破り、菅義偉氏が新総裁

▽16日 菅首相誕生

▽12月8日 鶏卵生産大手「アキタフーズ」からの現金提供問題が浮上した元農相の西川公也内閣官房参与が辞任

▽12月21日 安倍前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補てん問題で、東京地検特捜部が安倍氏を任意聴取

▽22日 アキタフーズからの現金提供疑惑が浮上した吉川貴盛元農相が議員辞職