北海道・知床沖で観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没した事故で、運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の運航を統括する「運航管理者」である桂田精一社長(58)をめぐり、海上運送法で定められた要件を満たさないまま運航管理者を務めていた可能性が報じられている。

運航管理者を選任したり解任したりする場合、各事業者が「運航管理者選任(解任)届出書」をそれぞれの地方の運輸局長(外国航路の場合国交相)あてに届け出るルールだ。書類のひな形は国交省ホームページに公開されている。届け出には添付書類として、事業者の代表による運航管理者の資格証明書が必要だ。この証明書も同じく国交省ホームページで公開されている「運航管理者資格証明書」のひな形に基づいて事業者の代表者が作成する仕組み。資格証明に疑義があったり、要件を満たしていない人物を届け出る可能性などについて、国交省関係者は「旅客事業は多くの人命を預かる事業であり、そのようなケースを想定していない」と語った。

知床で観光船事業を営む関係者は「こういう書類は、普通は海の法律に詳しい国家資格を持った『海事代理士』に依頼する会社が多い」と語る。「そこから先はもう、国交省の判断ということになるんだと思う」と語った。

航空事業の「運航管理者」には運航管理者技能検定があり、合格すると得られる公的な運航管理者資格必要だ。自動車事業の「運行管理者」にも公の資格者証を交付された人の中から、事業者が運行管理者を選任する。一方、海の場合、公の資格証明はなく、事業者の代表者が資格証明を出す形になっている。

国交省によると、虚偽の届け出や要件に満たない人物の届け出などのチェック体制としては、海上運送法に基づく質問や立ち入り検査を行うことができ、必要に応じて行政処分を行う。ただ、「管理者」の要件について、公的な資格をよりどころにしている空と陸に対し、海は事業者代表が資格証明を行うという異なる対応となっており、関係者は「先月28日に立ち上げられた『知床遊覧船事故対策検討委員会』では『事業参入の際の安全確保に関するチェックの強化(役員・運航管理者の資質の確保等)』が今後の検討事項としてあげられている」と説明した。