将棋の最年少5冠、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第3局が28、29の両日、金沢市の「金沢東急ホテル」で行われ、先手藤井が95手で羽生を破った。シリーズ対戦成績を2勝1敗とした藤井は王将初防衛、5冠堅持に前進した。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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羽生九段にしては珍しく、穏やかな指し回しでしたね。初日の午後、4筋の歩を成り捨て、再度垂らした後に長距離砲の角を打ち込むとか、封じ手前に右金を4筋ではなく6筋に回して、飛車を4筋に回すとかなかったでしょうか。次の歩成が強烈ですから。初日は見応えのある攻防でしたけど、2日目はいいところがなかったです。やっぱり、将棋は攻めの可能性がないと面白くありませんよ。

負けはしましたが、今局で採用した雁木はもう1回使えるでしょう。楽しみのある将棋でしたから。第4局は先手番。まだ披露していない戦法も含め、どんな手を繰り出してくるか。巻き返しに期待しましょう。

藤井王将は非の打ちどころのない勝ち方でした。相手に粘る余地を与えていないし、仕留め方も言うことなしです。特に敵陣の6筋に角を打ち込んでからは、玉の脱走も含めて対応に忙しい羽生九段に比べ、余裕を持って戦えたと思います。

ひそかに楽しみにしているのは、2月1日のA級順位戦8回戦(永瀬拓矢王座戦)です。藤井王将は後手ですが、名人挑戦に向けて大きな関門となります。同じ後手番の王将戦第4局もにらんでどんな戦い方をするのか。指し回しに注目しています。(加藤一二三・九段)

◆雁木 将棋の囲いのひとつ。鳥の雁の群れが斜めにジグザグに連なって飛ぶ様子に見立てたことが名前の由来とされる。自身の玉の前に銀や金を配置するのが一般的。手数がかからず、攻守に柔軟性があるため早めに仕かけることができる。