東京・神宮外苑の再開発をめぐり、事業者に工事施行を認可した東京都に、地域住民ら59人が認可の取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が29日、東京地裁(岡田幸人裁判長)で行われた。原告団長の米実業家ロッシェル・カップさんは意見陳述で「都民、国民不在の再開発計画が決まり、多くの問題を残したまま強引に進められていることに大きな疑問と怒りを覚える」と、主張。情報公開や住民との意見交換も不十分だったと指摘した。都側は争う方針を示した。

再開発をめぐっては、今年3月に死去した音楽家の坂本龍一さんが生前、小池百合子都知事らに計画見直しを求める手紙を送ったことが、多くの関心を集めるきっかけになった。28日には、坂本さんの言葉を身近で聞いてきた有志が「坂本龍一と神宮外苑を心配する」というサイトを立ち上げ、再開発に関する坂本さんの言葉や関連資料を掲載し、考えて行動する機会にしてほしいと訴えた。

一方、今月25日には作家の村上春樹さんが、自身が進行役を務めるラジオ番組で「個人的に強く反対しています。1度壊したものってね、元には戻りませんから」と、再開発への反対を表明。坂本さんの後任として、一般社団法人「more trees」代表理事に就任した建築家の隈研吾氏は、坂本さんが生前訴えていた「生物多様性や自然環境を保全しながら地域をアップデートする持続可能な開発」などのビジョンに賛同する考えを、「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」の質問に対して回答したという。著名人の意見表明は今も続いている。

再開発の工事はすでに始まっている。それでも、4つの反対署名が29万筆を超えたと述べたカップさんは「自治体が開発事業者と協力し、市民を意思決定プロセスから閉め出すパターンは全国で起きている。(今回の裁判の行方は)全国の開発のあり方にも影響する」と訴えた。【中山知子】