大阪・関西万博が、来年4月13日から同10月13日の日程で開催される。会場は大阪市の夢洲(ゆめしま)地区で、現在159カ国(23年11月末現在)が参加を表明している。パビリオンの建設遅れ、運営費の増加などが指摘されているが、「愛・地球博」(愛知)以来、日本で20年ぶり6回目の大規模万博となる。そもそも万博とは何かや、日本での過去の開催など、万博の基礎知識を紹介する。【笹森文彦】
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万博は「万国博覧会」の略称で、正式名称は「国際博覧会」。英語では「EXPO(エキスポ、博覧会を意味するExpositionの略)」である。
「大阪・関西万博」も略称で、正式名称は「2025年日本国際博覧会」。日本での万博としては、愛知県で開催された「2005年日本国際博覧会(略称=愛・地球博)」以来、20年ぶり6回目となる。
万博は、国際博覧会条約に基づき、仏パリに本部を置く博覧会国際事務局(BIE)に承認されたイベントである。同条約によると「公衆の教育を主たる目的とする催し」「文明の進歩に寄与し、将来の展望を示す」ためのものとされる。
起源は紀元前の強国の戦利品展示や、ヨーロッパの「市」と言われる。簡単に言うと、万博は「世界中から多くの人やモノが集まるイベントで、各国の文化や科学技術などを広め、共有する場」である。
万博創生期から、さまざまな技術が公開されてきた。第1回万博は1851年(嘉永4)に、産業革命発祥地の英ロンドンで行われた。当時としては珍しい全面ガラス張りの建物クリスタルパレス(水晶宮)が目玉展示物となった。この他、歯車式計算機、医療器具として開頭手術用のこぎりなどが展示された。
1876年(明9)の米フィラデルフィア万博では、グラハム・ベルの電話機が初公開された。1889年(明22)の4回目のパリ万博では、当時、世界で最も高い312メートルのエッフェル塔が登場。建設技術の高さを見せつけた。
1933年(昭8)の米シカゴ万博で、初めてテーマ「進歩の1世紀」が設定された。ドイツが巨大飛行船ツェッペリン号を飛行させ、高度に進歩した航空技術を披露した。
このほか、初期の万博では電灯、ミシン、洗濯機、カメラ、自動車、テレビなどが展示され、世界に技術が広まった。大砲など武器も重要な展示物だった。
アジアで初めて開催された1970年(昭45)の大阪万博でも、次代の技術が展示された。電気自動車、携帯無線電話機、テレビ電話、動く歩道など。人間洗濯機なるものも登場し、のちの介護用浴槽につながった。夢のエネルギーと言われた原子力発電で、会場を照らした。
食コーナーには、ケンタッキーフライドチキンやハンバーガー、コーラ、缶コーヒーなどが登場。その後、日本中に広まった。いまでは当たり前のことが、半世紀前は画期的だった。
日本が初めて万博に参加したのは1867年(慶応3)の第2回パリ万博。大政奉還の年だった。
大阪万博以前にも、日本での万博開催の動きがあった。1940年(昭15)に計画された「紀元2600年記念万博」である。日本書紀に基づく日本建国から2600年という節目を祝い、関東大震災(23年)からの復興を世界にアピールするために企画された。テーマは「東西文化の融合」で、東京・横浜が会場だった。入場回数券が100万冊発売されたが、日中戦争の激化などで38年に中止となった。
東京・中央区にある勝鬨(かちどき)橋は、会場までの輸送路として建設された。当時、東洋一の可動橋と言われ、世界に日本の技術を示す予定だった。
この時の幻の入場券は大半は払い戻されたが、「戦時中で払い戻しが困難だった方もいる」として、30年後の大阪万博、65年後の愛・地球博の入場券として使えた。85年後となる来年の大阪・関西万博でも、所持している人がいれば使用できるという。タイムカプセルのような話である。
■万博各回の概要
来年の大阪・関西万博は日本で6回目の万博である。各回の概要を紹介する。
【項目の見方】(1)開催期間(2)場所(3)テーマ(4)参加国数(日本を含む。国際機関は除く)(5)総入場者数(6)特色など
▼大阪万博(1)1970年3月15日~9月13日(183日間)(2)大阪千里丘陵(3)「人類の進歩と調和」(4)77カ国(5)6422万人(6)「月の石」を展示したアメリカ館、実物の宇宙船を展示したソ連館が人気だった。芸術家・岡本太郎氏がデザインした「太陽の塔」がシンボルだった。テーマソングは「世界の国からこんにちは」。
▼沖縄海洋博(1)75年(昭50)7月20日~76年1月18日(183日間)(2)沖縄・本部町(3)「海-その望ましい未来」(4)36カ国(5)349万人(6)史上初の「海」をテーマにした国際博覧会。世界初の未来型海洋都市をイメージして建造された人工島「アクアポリス」がシンボルだった。プロデューサーは漫画家の手塚治虫氏だった。
▼つくば万博(1)85年(昭60)3月17日~9月16日(184日間)(2)茨城・筑波研究学園都市(3)「人間・住居・環境と科学技術」(4)48カ国(5)2033万人(6)2足歩行ロボットなどによるショーや、各パビリオンの光や水、火を駆使した演出で楽しませた。巨大な観覧車やリニアモーターカーも登場し、未来の遊園地と好評だった。
▼花の万博(1)90年(平2)4月1日~9月30日(183日間)(2)大阪鶴見緑地(3)「花と緑と生活のかかわりを捉え 21世紀へ向けて潤いのある社会の創造を目指す」(4)83カ国(5)2312万人(6)アジア初の国際園芸博覧会。会場は「野原のエリア」「山のエリア」「街のエリア」の3区域に分けられた。世界各国の、希少な植物を含む1200種類、250万本の草木が展示された。
▼愛・地球博(1)05年(平17)3月25日~9月25日(185日間)(2)愛知・瀬戸市南東部、豊田市、長久手市(3)「自然の叡智」(4)121カ国(5)2205万人(6)21世紀の人類が直面する課題解決の方向性を発信した。地球温暖化の影響でシベリアで発見された約1万8000年前のマンモスを冷凍室で展示し、長蛇の列ができた。
▼大阪・関西万博 =計画、予定= (1)25年(令7)4月13日~10月13日(184日間)(2)大阪湾の人工島・夢洲(3)「いのち輝く未来社会のデザイン」(4)159カ国(5)2820万人(6)18年11月に立候補したロシア、アゼルバイジャンを破り開催が決定した。略称は70年の大阪万博との混同を避けた。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを体験できる「未来社会の実験場」がコンセプト。持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献も目指す。
★規模で2種類区分
96年から万博は(1)開催期間(2)会場規模(3)開催時期で、「登録博覧会」と「認定博覧会」に区分された。
▼登録博覧会 (1)6週間以上6カ月以内(2)制限なし(3)5年ごと
▼認定博覧会 (1)3週間以上3カ月以内(2)25ヘクタール(東京ドーム約5・3個分)(3)登録博覧会の間で1回
前者が大規模で、後者は小国でも開催可能となる。
以前は「一般博覧会」(テーマを2つ以上の部門とし、参加国が自国のパビリオンを建設)と「特別博覧会」(特定のテーマに絞り、開催者が展示館の骨組みを建設して、参加国に貸与する)に区分されていた。
大阪万博は「一般博」。沖縄海洋博、つくば万博、花の万博は「特別博」。愛・地球博と大阪・関西万博は「登録博」である。
◆笹森文彦(ささもり・ふみひこ)札幌市生まれ。83年入社。主に文化社会部で音楽担当。競作の「世界の国からこんにちは」は三波春夫さん盤が大ヒットした。三波さんの発案で世界各国の子供たちとレコーディングして、人類の調和を見事に表現した。

