藤井聡太王将(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・棋聖=21)が8日、王将戦3連覇を果たした。
出場したタイトル戦を全て制し、20期連続の獲得は故大山康晴15世名人の19期を抜き最多。昨年10月に史上初の全8冠独占後も超スピードで「進化」を続ける21歳に師匠やライバルは驚く。将棋界のレジェンドたちの「大記録」を次々に塗り替え、誰も達していない境地にたどり着こうとしている。
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昨年10月に全8冠制覇後も、藤井の「進化」のスピードは失速するどころか、急速に上がっている。8冠後は16対局14勝1敗1持将棋(引き分け)。師匠の杉本昌隆八段(55)は「読みの精度も上がっているし、見切りの精度が上がっている。より盤石の将棋を指すようになった」と驚く。
序盤からゆっくりと駒組みを進め、相手のミスを的確にとがめてリードを拡大する。相撲で言えば、じっくりした立ち合いから、相手のまわしを取って、引き寄せて押し切る「横綱相撲」。これまで以上に序盤、中盤、終盤と完成度の高い強さを見せるようになり、最強の「横綱将棋」を構築しようとしている。
進化のスピードを上げる原動力がある。幼稚園のころから始めた詰め将棋をタイトル戦の移動の合間などに続けている。スポーツに例えるならウエートトレーニングとも言える将棋の基礎トレーニングで、土台をさらに強化している。
デジタル技術の急速な進化にも柔軟に対応した。人工知能(AI)の出現で将棋の固定観念が次々と崩され、多くの棋士が戸惑う中、藤井は序盤の研究にディープラーニング(深層学習)系の将棋ソフトを取り入れた。ソフトが得意とする形勢判断のエッセンスを巧みに吸収し、進化のスピードを上げる。
4日開幕の棋王戦5番勝負第1局で藤井に初めて持将棋を経験させた同学年の伊藤匠七段は「全棋士の中でも読みの精度とスピードが群を抜いている」。タイトル戦では長い時間をかけて、水面下では多くの手を読む。実際に指さなかった手を持ち帰り、深い研究を重ねる姿も想像できる。
タイトル戦では負けなしの20連覇。「まさに無双状態。タイトル戦ではだれも勝てないのではないか。30連覇、40連覇だってありえる」と将棋関係者。小学校の卒業文集に「将棋界の横綱になりたい」と書いた少年が「大横綱」の階段を猛スピードで駆け上がる。【松浦隆司、赤塚辰浩】
◆大山康晴(おおやま・やすはる)。1923年(大12)3月13日、岡山県倉敷市生まれ。40年2月、プロに。50年、九段戦(竜王戦の前身)で優勝し史上初の20代タイトル。52年、初の20代名人に。タイトル80期と通算1433勝は歴代2位。92年7月、名人戦挑戦権を争うA級順位戦に69歳4カ月の最年長在籍記録を残し、現役のまま亡くなった。

