棋士の佐藤紳哉七段(47)が、13年ぶりにNHK杯将棋トーナメント本戦に出場し、木村一基九段と対局した1回戦が20日、放送された。102手で敗れたが、対局後には自身のYouTubeチャンネルを更新。将棋界で伝説となっている自身の過去のインタビューにも触れながら、今回の出場を振り返った。

佐藤七段は13年前、当時ともに六段だった豊島将之現九段とNHK杯で対戦。恒例となっている対局前インタビューでは、長髪の“カツラ”を付け、黒ずくめの衣装という、前代未聞のスタイルで登場した。さらに「豊島?強いよね! 序盤、中盤、終盤、スキがないと思うよ。だけど、オレは負けないよ」と意気込むと、抱負を聞かれ「え~、駒だっ…駒たちが躍動するオレの将棋を、皆さんに見せたいね」と、言葉をかみながら返答。プロレスラーの“あおり”のような回答で将棋界に強いインパクトを残し、その後、複数の著名棋士がコメントの際にパロディーのように取り込むなど、伝説のインタビューとなっていた。

今回の対局前インタビューでも、13年前を彷彿とさせる“カツラ”姿に黒い衣装で登場。「久しぶりだね~、この日のために、ずっと、ずっと、やってきたよ!」と流ちょうに進化した口調で語りかけると、「木村さんはオレよりはるかに強いと思う。だけど、勝負はやってみないと分からない!」とこぶしをにぎり、「今日こそは、オレの駒たちが躍動してくれる、と、信じている」と両手を開いて恍惚の表情に。最後は「皆さんも応援して欲しい」とカメラ目線で呼びかけていた。

結果は今回も無念の黒星だった。ただ対局後にはYouTubeチャンネルを更新すると、「NHK杯戦、応援ありがとうございました」と感謝。「一歩、及ばなかった~、残念。相手に攻めを見切られてしまいましたね」と悔しさもあらわにした。

続けて「この13年ぶりのNHK杯戦なんですけど、2つ、やりとげたいな、ということがありました。1つは、最初のインタビューをしっかりとこなす。そして、もう1つが、NHK杯、本戦初勝利だったんです」と語り、「インタビューの方で言うと、13年前、ちょっとイキったキャラクターで、カッコよくインタビューをキメようと思ったら、緊張してしまって、横揺れがひどかったり、途中でかんでしまったり、散々でした。あんなつもりじゃなかったんです」と回顧。「そこで、今回は、もっとちゃんとできるんだ、というところを見せたいなと思いまして、しっかりと演じきろう、やりきろう、できるところを見せよう、という気持ちで臨みました」と振り返った。

さらにインタビューについて「今回のキャラ設定としては『あの時の13年後』。ただイキっているだけじゃなくて、年月を重ねて、感情が豊かになって、深みの増したキャラクターですね」と説明。「カツラは13年前と同じ物を使いました。年月を表すために、ちょっとヒゲをはやして、役作りをしてみました。服の方は、色のトーンは一緒なんですけど、ちょっと違う服という形で。カツラで13年前と同一人物、そしてヒゲと服で13年の月日を表現しました。伝わったでしょうか?」と呼びかけた。

セリフは1週間前に決めたといい、対局当日は自宅で予行練習。その動画も公開し、「何の憂いもなく、臨むことができました。撮り直しやリハーサルはなしで1発でした」と、現場の様子も語った。

対局についても振り返った。先手で相がかりとなったが「すぐに予想してない展開になりました。序盤から激しいことになりました」と回想。悔やまれる場面もあったことを明かすと、正解の一手であれば「もしかしたら駒たちが躍動する未来があったかもしれないですね」と、13年前のインタビューの名言も織り交ぜて解説した。攻勢の場面では「思わずカツラを飛ばしそうになりましたね」と笑い、実際のNHK杯ではできなかった“カツラ飛ばし”も実演。ただ最後は、木村九段の得意な受けの形になったといい「気持ち良く攻めているつもりでも、相手の術中だった。その後は差を広げられたまま、全くチャンスはありませんでした」と敗因を分析した。

佐藤七段は「終局後のインタビューがあったんですよね。全く考えてなくて、最初のキャラはどこかにいってしまって、2回目のインタビューは素で、普通に答えてました」とオチも。応援してくれたファンにあらためて感謝し「2回戦3回戦とあると、また他のキャラ、という風にも考えていたんですけど、それはまた、次回以降のお楽しみということで。精いっぱい頑張って、皆様の前で将棋を指せるように頑張っていきたい」と、再出場への意欲も示した。