衆院選(8日投開票)を戦う高市早苗首相(自民党総裁)に1日、「逆風」が吹き始めた。物価高騰につながる円安をめぐる「『外為特会』の運用もホクホク状態」発言に加え、この日、与野党党首が一堂に会したNHKの討論番組を、ドタキャン。遊説中の握手によるけがの治療と説明がなされたが、治療を終えて午後の地方遊説は予定通り実施した。結果的に「党首対決」を避けた格好となり、X(旧ツイッター)などで一方的に釈明するケースが続く形にもなっており、高市首相に好意的なSNSでも「逃げ」ではないか、との指摘が相次いだ。自民党は、空気が変化しないよう神経をとがらせている。
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衆院選「ラストサンデー」となった1日朝、与野党11党首が出演予定だったNHK「日曜討論」に、高市首相の姿はなかった。司会者が「今朝、連絡がありました」と、ドタキャンだったことを報告。代理出演した田村憲久元厚労相は、高市首相が前日の選挙遊説の際に「腕を痛めた」と明かし、治療のために出席できなくなったとして、陳謝した。
高市首相は公示日にも手首にサポーターを巻いた様子が確認され、SNSで心配の声が出ていた。前日も、左手に白いサポーターを巻いていた。高市首相は1日、X(旧ツイッター)を更新。遊説会場で支援者との握手の際、「手を強く引っ張られて痛めてしまいました」と明かし、「関節リウマチ」の持病があることから手が腫れたとも説明。医務官の治療を受けテーピングを施されたとして、午後の地方遊説は予定通り実施した。その際、指にはテーピングがなされていた。
ただ、この日の各党党首との討論は、投開票前、最後の「直接対決」の場とみられていた。高市首相をめぐっては、1月31日の川崎市の演説で、自身の政権下で進む円安に批判があることを念頭に「今、円安だから悪といわれるが、輸出産業には大きなチャンス」「外為特会(外国為替資金特別会計)の運用もホクホク状態」と発言。庶民には縁遠くなった「ホクホク」発言に、中道改革連合の野田佳彦共同代表は1日、東京都内の街頭演説で「『生活者ファースト』の考えが、まったく分かっていない。家計簿をつけながら、ホクホクしている人がいますか!」と憤慨した。
また「日曜討論」には、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体の地方組織によるパーティー券購入疑惑報道の追及を明言していた、れいわ新選組の大石晃子共同代表も出演していた、
野党関係者からは「総理は、ホクホク発言や文春報道の追及を避けたかったのではないか」と、いぶかる向きもある。SNSでも「逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げ切ってみせます、か」と皮肉るようなコメントが寄せられるなど、高市首相にとっていつにない「逆風」が吹き始めた。
高市首相は、「ホクホク」発言についても、Xで釈明。「為替変動にも強い経済構造を作りたいとの趣旨で申し上げ。円安メリットを強調した訳ではない」と記した。街頭演説や、こうしたSNSでの一方的な主張となっていることへの不満も、野党内にはくすぶっている。
首相の高い支持率頼みで戦う自民党内には、「追い風なのか、向かい風なのか、分からない」と戸惑いの声も漏れる選挙戦。党側は、空気が変化しないよう神経をとがらせる。1998年には、参院選中の「恒久減税」発言のぶれが指摘されて大敗し、当時の橋本龍太郎首相が退陣に追い込まれたケースもある。選挙中の首相発言は時に、戦いの流れに影響しかねない。
一方、序盤情勢で出遅れが指摘された中道では、約100ある自民との接戦区情報が共有され、巻き返しに向けて動き始めた。

