藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・棋聖・王将=23)が2期連続で増田康宏八段(28)の挑戦を受ける、将棋の第51期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第3局が1日、新潟市の「新潟グランドホテル」で行われた。角換わりから急戦を挑んだ増田に対し、藤井が冷静に応じて抜け出しかに思えたが、終盤で対応を誤り失速。増田に2勝目を献上し崖っぷちに立たされた。かけ持ちしている王将戦7番勝負も来週8、9日の第5局(栃木県大田原市「ホテル花月」)を前に1勝3敗でかど番に立たされており、今年に入り負けが目立つ。

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藤井包囲網は確実に狭められている。マークは確実に厳しくなっていると、記者は見ている。

プロ野球で言えば、相手チームの投手や野手の動きを分析して自軍の攻撃に生かすようなもの。投手なら握りのクセなどを盗んで持ち球を読む。配球を分析してカーブなどに狙い球を絞る。連係プレーなら、緩慢な外野手の動きを見て、二塁から本塁へと突入させる。外野からの中継で内野手が半身になって走者の動きを警戒せず、本塁に背を向けて送球をもらう隙を突き、一塁から一気に本塁を狙わせる。

これと同じで、ある局面からまったく違う枝葉的な指し手を研究して誘導したり、過去の対局で藤井が採用したことのない戦型で優位に立つ。

そんな藤井対策の顕著な成功例は、2022年秋の竜王戦にあったとみている。挑戦者の広瀬章人現九段は、明らかに藤井が経験したことがなさそうな形をAIで研究してぶつける戦術を採用した。結果的に2日制7番勝負で初めて2勝を挙げた。

これに羽生善治九段が続いた。続く23年の王将戦で第4局を終えて2勝2敗。広瀬と同じような戦術に持ち込み、藤井に快勝していた。羽生はシリーズ前に「鉱脈はある」と評していた。

完敗した後の藤井はよく、「初見の形で」と語っていた。それがツケ入る隙なのかも知れない。

実際に「鉱脈の発見」は、多くの棋士のヒントになったと思われる。藤井と同学年の伊藤匠が叡王、王座と連続してタイトルを奪った。永瀬は初めて藤井と2日制7番勝負でぶつかった王将戦、続く名人戦と1勝4敗だったが、王位戦で2勝4敗、現在シリーズ途中の王将戦では初めて3勝を挙げている。藤井が考えていない手や作戦をぶつけるのは、将棋界で着実に効果を発揮している。

対する藤井は昨年の年頭所感で「変化を進化に」に語り、大黒柱の角換わり以下、相掛かり、矢倉に加え、新たに雁木(がんぎ)や横歩取りなどの戦法にも新たに取り組んでいる。

また、一昨年の竜王戦でタイトル戦初登場の佐々木勇気八段に2勝4敗と苦しめられたことから、昨年連続挑戦してきた佐々木との竜王戦では「対応力」を課題に挙げてきた。このシリーズでは4連勝している。

マークされる側が手を尽くしてしのぐのか、「藤井に勝てばヒーロー」とばかりに対戦相手が新たな鉱脈を見つけてぶつけてくるか。それが盤上で披露されることで、将棋はより面白くなっていく。

【将棋担当・赤塚辰浩】

【棋王戦】藤井聡太棋王敗れ1勝2敗に 1勝3敗の王将戦と「ダブルかど番」もう負けられない