ママコチャは決して理想的な競馬ではなかった。好スタートから5番手に控えるも、3コーナーで内のナムラクレアが外へ張ってきたため、外メイケイエールとの間に挟まれて接触。一気にスイッチが入った。11秒2の高速ラップが続く中、できれば好位で脚をためたいところ。難しい選択となったが、川田騎手は走りのリズムを優先した。
無理に抑えず3番手までポジションを上げることでエキサイトした気持ちを解放していく。もちろん、手綱を引いて押さえ込むこともできただろうが、鞍上との意思疎通を欠けば、体力だけでなく精神的な消耗も大きい。だから馬の気に逆らわず、あえて譲る形で走らせた。このあたりの切り替えはさすがだ。また良馬場にしては下が緩く、後ろから速い脚は使えない、との読みもあったのかもしれない。
4コーナーでは馬場のいい外めに持ち出して一気にスパート。仕掛けのタイミングも見事だった。先頭に立つと後続を待たず惰性をつけたままゴールへ。早めに突き放したことで、マッドクールの追い上げを鼻差退けることができた。少しでもちゅうちょしたら、着差が着差だけに、結果はどうなったか分からない。川田騎手の「機転」の利いた騎乗が、ママコチャにG1制覇をもたらした。