ジャンタルマンタルの川田騎手は、直線を待たずに勝負を懸けた。残り800メートル過ぎ。前を走るダノンマッキンリーが内を空けたのを見ると、素早くラチ沿いに潜り込んでポジションを上げた。キャリアの浅い2歳馬。ここで動くのは勇気がいるが、そこまでの折り合い、手応えなどを考えて前へ出た。

直線は早め先頭という形になったが、馬場の悪い内から真ん中へ。少しでも走りやすい場所を選んで誘導した。このあたりも計算していたのだろう。もし、あのまま内で我慢していたら馬群に包まれるか、荒れた内を走らされてしまう。行くなら今。そのワンチャンスを見逃さなかった。

今回が初コンビになるが追い切りでの感触、返し馬の気配、そして過去のレース分析。スタート前の準備がしっかりできているから選択肢も広がる。あとは余計な動きをしないこと。周囲には掛かる馬も多かったが、それに動じず鞍上の指示通り動ける馬のメンタルもすごい。この競馬ができれば、距離も2000メートルくらいは持ちそうだ。

惜しかったのは2着のエコロヴァルツ。向正面で掛かった隣のミルテンベルクと何度か接触。その影響でリズムを崩したため、武豊騎手は後方へ下げざるを得なかった。最後方から直線は大外。勝ち馬に比べるとかなりロスの多い競馬になったが、それで0秒1差は価値がある。こちらも来春のG1が楽しみになった。

朝日杯FSを制したジャンタルマンタルをねぎらう川田騎手(撮影・白石智彦)
朝日杯FSを制したジャンタルマンタルをねぎらう川田騎手(撮影・白石智彦)