天皇賞・秋が行われる東京2000メートルは、スタミナ系瞬発力がものを言う。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、オールカマー5着ガイアフォース(牡4、杉山晴)に注目。今年2戦使ったマイルで33秒台前半の上がりをマーク。厳しい流れの中で繰り出した瞬発力が、このコースにフィットするか検証した。

安田記念で4着のガイアフォース(左)、中央は勝ったソングライン
安田記念で4着のガイアフォース(左)、中央は勝ったソングライン

ガイアフォースの全3勝は2000~2200メートルで挙げており、今年のAJCCまで最速の上がりは34秒3。中距離での「ワンペース」といった印象が強かった。ところが、マイラーズCで初めて1600メートルを使うと、中団から上がり33秒2の脚でシュネルマイスターの首差2着。続く4着の安田記念でも同33秒3で、2着セリフォスとは頭+首差の接戦を演じた。

今回は東京2000メートルに替わるが、この舞台はスピード、瞬発力はもちろん体力も必要になる。ある程度速い流れに乗りながら、直線の坂で加速するスタミナがないと厳しい。マイル経験が生きる理由は、そこにある。安田記念を例にとれば、逃げたウインカーネリアンの前半1000メートルは57秒6。かなり体力を削られるペースだ。

この流れを中団グループでついていき、レースの上がり33秒8を0秒5も上回る脚で伸びた。直線ではやや窮屈になるシーンもあったが、ゴール前は日本が誇るトップマイラーのソングライン、シュネルマイスターと遜色のない脚を使ったのだから大したもの。もともと2000メートルは小倉(国東特別)で1分56秒8のレコード勝ちがありスピード、体力は十分。これに瞬発力が加わった今、東京2000メートルはぴったりの条件とみていい。

前走のオールカマーは5着と伸びを欠いたが3、4角で他馬にぶつけられ、コーナーの途中で逆手前になってしまった。勝負どころだけにあそこでリズムを崩したのは痛い。それでも0秒4差まで盛り返したあたりが能力の証明だ。大跳びでエンジンのかかりが遅い分、直線の長いコースも向く。相手はさらに強くなるがマイルで培った末脚を武器に、大駆けの可能性を秘めた1頭といえそうだ。

【ここが鍵】スタミナ系瞬発力必要

天皇賞・秋の過去5年は、1分56秒台が2回、1分57秒台が3回の高速決着になっている。そんな中、連対馬の上がり3ハロンも、大逃げの昨年2着パンサラッサ、19年2着ダノンプレミアム以外の8頭は32~33秒台をマークしており、それだけタフさが要求される舞台だ。

これまでにいくら速い上がりを出していても、スローの「よーい、ドン」では通用しない。前半から速い流れに乗っていけるスピードがあり、それでいてしまいも33秒台そこそこの脚が使える。いわゆる「スタミナ系瞬発力」のある馬でなければ、この条件で上位争いするのは難しい。

■スターズオンアース距離は不問

スターズオンアースは桜花賞、オークスの2冠馬で距離不問の万能タイプ。大阪杯では馬群に包まれながら、ジャックドールを鼻差まで追い詰めた。1分57秒4の速い時計があり、コンスタントに33秒台の脚も使える。ヴィクトリアMは、ソングラインと距離適性の差が出たが、それでも前半1000メートル58秒5についていっての0秒1差は強い。どんな流れにも対応できる自在性も魅力だ。

■プログノーシス脚力は通用

プログノーシスは2000メートルで【4 1 0 1】と抜群の成績を誇る。ただ金鯱賞はスロー、札幌記念は道悪(やや重)という条件だった。極端な高速決着になった時にどうかという不安もあるが、マイルでは1分32秒9の持ち時計がある。しかも3角からまくって、2着に3馬身差をつける圧勝劇。11秒台のラップを刻んだ3~4コーナーから動いたことを考えれば、G1でも通用の脚力はある。