天皇賞・春は遅咲きのステイヤーが穴をあける。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、阪神大賞典6着サヴォーナ(牡4、中竹)に注目した。昨年のダービー時は2勝馬で、春クラシックへの出走はかなわなかったが、秋は菊花賞で5着に入るなど力をつけた。ここへきての成長度、長距離適性から一発ムードが漂う。

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★「秋以降」

サヴォーナの上昇度が止まらない。神戸新聞杯2着から菊花賞5着、日経新春杯2着。重賞には届かなくてもレースぶりは格段に良くなっている。3歳春のクラシックは出走できなかったが、陣営が「良くなるのは秋以降」と話していたように、ようやくG1レベルで戦える体力がついてきた。

主戦の池添騎手も「いい成長曲線を描いている」と充実ぶりを認める。菊花賞は2周目3コーナーからまくって直線先頭に並びかけたが、そこから手前が替わらなかった。ずっと同じ手前(当時は右手前)では切れる脚は使えない。ブローザホーンに差された日経新春杯も同じ。手前が替わらなかったことが、詰めを欠いた原因だろう。

一方、前走の阪神大賞典(6着)は、狭いスペースの中でもしっかり手前を替えている。やや重で伸びを欠いたものの、走りのリズムは悪くなかった。また1週前のCウッドでも強い負荷をかけながら、右→左へスイッチ。それだけ左右のバランスが良くなり、パワーアップした証拠だ。今なら3200メートル走っても最後にもうひと脚使える。

★脚質転換

脚質転換も成長の証し。以前は後方から競馬を進めることが多かったが、最近は後肢(トモ)の甘さが解消し、スタートが遅くてもすぐにいい位置が取れる。日経新春杯では外枠(8枠13番)から好位の内に潜り込む器用さを見せ、レースの幅も広がった。

菊花賞から1ハロン延びる3200メートルは、スタートから3コーナーまでの直線距離が長く、流れにも乗りやすい。前走は4コーナーで前が壁。この馬本来の「長くいい脚を使う」乗り方ができなかった。京都替わりは歓迎。坂の下りからスムーズに加速、直線での手前替えがうまくいけばチャンスはある。

■ここが鍵 成長度に注目

過去10年、4歳馬は4勝しているが、3歳時に春のクラシックを制した馬はいない。昨年のジャスティンパレスは皐月賞9着、ダービー9着、22年タイトルホルダーは皐月賞2着、ダービー6着、16年キタサンブラックも皐月賞3着、ダービー14着。19年フィエールマンはともに不出走だった。春の完成度では劣っても3歳秋以降に力をつけ、菊花賞好走から天皇賞・春につなげた。また5歳で制した21年ワールドプレミアは、菊花賞V後の長期休養で4歳時は出走できず、1年越しの勝利だった。春の長距離G1は実績より成長度合いの大きい馬に懸ける手もある。

◆ワープスピード 三千超で安定

ワープスピードは3000メートル超えの競馬を使い出してから1、4、3、2着と安定している。阪神大賞典(2着)では向正面から早めに動いて、3着ブローザホーンに競り勝った。初勝利がデビュー8戦目だった。1年前に2勝クラスを勝ったばかりだが、そこからの成長ぶりには目を見張るものがある。このメンバーに入るとスピード、切れで見劣るが、スタミナでは負けていない。体力勝負の消耗戦になれば出番がある。

◆サリエラ スタミナ通用

サリエラはダイヤモンドS(3400メートル)で長距離適性を示した。前半は少し気負いも見られたが、テーオーロイヤルに食い下がったスタミナはG1でも通用する。母サロミナはドイツオークス馬。姉サラキアは5歳秋の府中牝馬Sで初重賞を制し、エリザベス女王杯、有馬記念ともに2着。この晩成型血統とステイヤーの資質を受け継ぎ、折り合いにも不安はない。盾男・武豊騎手とのコンビも魅力だ。