宝は砂中に眠っている。昨年11月にJRAとNAR(地方競馬全国協会)がタッグを組み、3歳3冠をはじめとしたダート路線の体系整備が発表された。「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」では、馬産地の北海道で種牡馬展示会を取材した東京の桑原幹久記者が「ダート系種牡馬」に注目した。

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「芝だけでなくダートでも」-。2月初旬、北海道でこの言葉を何度も耳にした。種付け頭数を見ると20年はキズナ、エピファネイア、レイデオロと芝G1馬が上位3頭を占めたが、21年はルヴァンスレーヴ、ゴールドドリーム、昨年はドレフォンが名を連ねる。社台スタリオンステーション(北海道安平町)の徳武英介場長は「芝だけ、というよりもダートG1馬やダートも走れる馬を出す種牡馬から満口になっていきますね」と“ダート種牡馬”の需要の高まりを実感する。

大きな理由が2つある。1つは「助成金」。ダート競走を主にする地方競馬は近年、馬券のネット発売などで売り上げを伸ばし、賞金もアップ。各競馬場は数年前から各馬主会に所属する馬主を抽選で選び、セリで購入した馬の数十%相当(上限あり)の金額を補助。自場での新馬導入促進を図っている。

2つ目は「ダート路線の充実」だ。昨年、3歳ダート3冠競走を中心としたレース体系の整備が発表され、2歳戦は23年、3歳戦は24年から適用される。1着賞金1億円の東京ダービーをはじめ短距離、牝馬の番組も見直され、ダート路線でも早い段階から賞金を稼げる。徳武場長は「生涯1億、ではなく2、3歳で1億稼げるなら『ダート馬を狙おう』と予算が上がることも多いと思います」と購入者側の思考の変化を口にする。

生産者側もリスクを考えれば、おのずと触手が伸びる。種付け料1000万円を超える芝系種牡馬と比較し、生産コストの低いダート種牡馬の子は購入者側の需要の高さから値が付き、利益を上げやすい。安定経営が実現できれば、生産馬の品質向上、競馬界全体のレベルアップと好循環につながっていく。

徳武場長は「さまざまな適性に合う馬が出てくれば、高額賞金レースを求めて国境を越えていくことが増えてくると思います」と近未来を見据える。日本時間26日未明には、世界最高賞金額のサウジCをパンサラッサが制覇。1着賞金は約13億円と夢がある。ダート種牡馬の台頭が、今後競馬界へ起こす変化に注目したい。

◆主なダート系新種牡馬 社台SSでは米ダートG1馬のホットロッドチャーリー(200万円)が今年から導入された。徳武場長は「ステイゴールドの子のように芝も走れるような体形。ダートはもちろん、芝の2000~2400メートルでも走れそうですね」と“二刀流”での活躍を期待。優駿SSではチュウワウィザード(120万円)、インティ(50万円)、アルクトス(30万円)、ケイティブレイブ(30万円)、レックススタッドではオメガパフューム(50万円)と、多くのダートG1馬がスタッドインしている。※カッコ内は種付け料。

◆3歳ダート3冠競走 24年スタート。4月の羽田盃、6月の東京ダービー、10月のジャパンダートクラシック(ジャパンダートダービーを改称)。すべてJpn1。各レースに優先出走権が与えられる前哨戦が設定された。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)