競馬を楽しむ新たな“視点”が加わった。今春のG1で導入されたジョッキーカメラは、YouTubeの「JRA公式チャンネル」で再生回数が計800万回を超えるなど大好評だった。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では、導入に携わった川田将雅騎手(37)を取材。その秘めたる思いに太田尚樹記者が迫った。

リバティアイランドで勝利した桜花賞で、ヘルメットにカメラをつけて騎乗する川田騎手(撮影・白石智彦)
リバティアイランドで勝利した桜花賞で、ヘルメットにカメラをつけて騎乗する川田騎手(撮影・白石智彦)

鞍上でしか味わえない感覚を数百万人が共有した。人馬を包む風切り音、沸き上がる大歓声、ライバルからの祝福-。ジョッキーカメラの臨場感あふれる映像は大反響を巻き起こし、公開第1弾となった桜花賞(リバティアイランド)は再生回数が213万回を超えた。その馬上にいた川田騎手は、鋭いまなざしを細めて好評を受け止めた。

「興味を持ってもらえてありがたく思います。喜んでもらえるだろうなと思って提案したので」

そう、実は自身が実現に大きく貢献していた。18年夏に遠征先の英国でカメラを着用して面白さを実感。JRAへ導入を打診したという。しばらく保留されていた計画は、昨夏から一気に動き出した。同じく着用経験のあった武豊騎手らの意見も踏まえ、テストを重ねた上でスタートした。

その桜花賞ではゴール後の映像も話題になった。「お嬢さん、終わりです」と愛馬に語りかけ、敗れた騎手からの祝福に応える。検量室前へ引き揚げるまでの4分29秒が、音声も含めてノーカットで公開された。海外ではレースだけで終わるのがほとんど。ここにも川田騎手の希望があった。

「レースを終えたジョッキーたちの自然な会話であったり、スタッフが喜んでいるところであったり、盛り上がってくれるお客さんの姿であったり…。そこまでお届けしたかったので」

たとえ競馬ファンでも、馬に乗った経験がある人は多くない。一般人にとって騎手の感覚を想像するのは難しい。そんな知られざる世界が少しでも共有されれば、競馬の厳しさや難しさ、そしてすばらしさを伝えられる。「競馬の新しい見え方をこれからも楽しんでもらえたら」。インスタグラムでも10万人近いフォロワーを集める第一人者。その口ぶりは静かでも、競馬の魅力発信にかける熱き思いを感じさせた。

今春のG1で公開されたジョッキーカメラの映像
今春のG1で公開されたジョッキーカメラの映像

◆JRAでは今夏のジョッキーカメラ実施も検討している。候補に挙がるのは直線重賞アイビスSD、世界の名手が集うWASJだ。実現に携わった総合企画部経営企画室の鶴岡史隆上席調査役は「導入にあたっては(カメラが)落ちないこと、気になる重さではないこと、乗る時に邪魔にならないことにまず気をつけました」と振り返った上で「予想以上の反響でした」と驚いていた。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)