今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は、奥岡幹浩記者が林正道オーナーの思いを取材した。8月の未勝利戦でシルバードン(牡3、牧、母シルバージェニー)が勝利し、父アルバート産駒としては中央地方通じて初勝利となった。母も含めてすべて林オーナーの所有馬。ステイヤーの父が送り出り出したダート短距離馬の裏には、狙いもあった。

8月、3歳未勝利戦を制したシルバードンと石橋脩騎手(右)
8月、3歳未勝利戦を制したシルバードンと石橋脩騎手(右)

オーナーの思いがたっぷりつまった1勝だった。8月10日、新潟3歳未勝利戦で、3番人気シルバードンが1着。アルバート産駒にとって、中央地方通じて待望の初白星となった。

アルバートとシルバードン。父子の勝負服はいずれもえび色に黒の縦縞で、馬主は林正道氏だ。アルバートはステイヤーズSを15年から3連覇するなど息長く活躍し、19年ステイヤーズSでも2着に入った。林オーナーは「さらに大きなところでの活躍をあきらめられず、同一重賞3連覇のあとも現役で走ってもらった。思い入れがある馬なんですよ」と振り返る。

芝の長距離砲として名をはせた馬の産駒が、初めて白星をつかんだのはダート1200メートル戦だった。父とはまったく異なる舞台での快走。シルバードンの勝利は、あらためて競馬の奥深さを感じさせた。

もっともオーナーにとって、アルバート産駒のダート戦での勝利はイメージに描いていたものでもあった。そのステイヤーの父は、フェブラリーSなど砂のビッグタイトルを多数手にしたアドマイヤドン。「だからダートで一発来ないかと思っていて」。シルバードンの馬名は、祖父の名の一部を授かった。

16年12月、第50回ステイヤーズステークスを連覇したアルバートとライアン・ムーア騎手
16年12月、第50回ステイヤーズステークスを連覇したアルバートとライアン・ムーア騎手

アルバートは北海道新冠町の優駿スタリオンステーションでけい養されている。交配相手の大半は林オーナーの所有馬。「自分で抱えて、自分の馬につけているから、とてもコストがかかっているんですよ」と本人は笑う。同スタリオンの担当者は種牡馬生活を送るアルバートについて「性格は穏やか。とても元気に過ごしていますよ」。そしてシルバードンによる1勝目は「オーナーが我慢強くけい養してくれているからこそ、勝利につながった」と力説する。

シルバードンが初勝利を挙げた日、林オーナーは所用のため競馬場に足を運べなかった。「牧調教師も来ることができず、口取り写真は寂しいものになっちゃって…」。だからこそ2週後の昇級初戦、オーナーは新潟へと向かった。出走馬のパドック周回後に記者に声をかけられると、「昇級初戦の今日は厳しいかもしれないけれど、できれば牧調教師といい写真が撮れれば」。残念ながらこの日は6着に敗れたが、今後への期待を抱かせる走りでもあった。2勝目の口取り写真には、オーナーのとびきりの笑顔が映えることだろう。【奥岡幹浩】

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)