<桜花賞>◇7日=阪神◇G1◇芝1600メートル◇3歳牝◇出走18頭◇5着までにオークス優先出走権

線抜け出して桜花賞を制したステレンボッシュ(左)(撮影・白石智彦)
線抜け出して桜花賞を制したステレンボッシュ(左)(撮影・白石智彦)

阪神JFの1、2着馬が入れ替わった決着となりました。当時、首差で敗れたステレンボッシュが、今度は4分の3馬身差で雪辱しました。走破時計は阪神JFが1分32秒6で、今回が1分32秒2。レースの前半800メートル通過は同じく46秒4と46秒3。位置取りもほぼ同じような中団でした。

阪神JF2着に敗れたステレンボッシュ(左)と勝ったアスコリピチェーノ
阪神JF2着に敗れたステレンボッシュ(左)と勝ったアスコリピチェーノ

では、何が逆転につながったのか。1つは直線の進路取りでしょう。阪神JFでは、ルメール騎手がアスコリピチェーノの外へ出しかけて、内へ切れ込みました。もたれた面もあったのかもしれませんが、あのわずかなロスが響きました。今回のモレイラ騎手は4角でアスコリの内から馬体を併せ、そこから真っすぐに上がってきました。

4コーナーを回るステレンボッシュ(右から4頭目)(撮影・前岡正明)
4コーナーを回るステレンボッシュ(右から4頭目)(撮影・前岡正明)

それを可能にしたのは、陣営の仕上げです。阪神JFは、その前走赤松賞からわずか中2週。私も経験がありますが、当時まだ2歳の牝馬ですから、調整で楽をさせた面が多少なりともあったと想像します。今回は十分な間隔を取り、入念な調整。同じローテのアスコリが+10キロだったように、4カ月ぶりなら普通はプラス体重になるはずですが、ステレンはマイナス4キロでした。前走時にやはり多少の加減があり、今回は厳しく仕上げた証しでしょう。数字を見て、さすが国枝厩舎だと感じました。

桜花賞の口取りでJ・モレイラ騎手(右から2人目)に声を掛ける国枝師(撮影・加藤哉)
桜花賞の口取りでJ・モレイラ騎手(右から2人目)に声を掛ける国枝師(撮影・加藤哉)

血統的にも楽しみですね。ディープインパクトの母として知られるウインドインハーヘアから続く優秀な母系で、皐月賞で注目されるレガレイラも同じです。距離が延びるオークスでも主役でしょう。

アスコリピチェーノもいい脚を使い、さすが2歳女王という競馬でした。坂を上がってから、しぶとく差を詰めていました。逆転を許したのはやはり進路取りが大きかったと思います。

3着ライトバック、4着スウィープフィートは最後方付近から、それぞれ上がり32秒8、33秒0とすごい脚で追い上げてきました。数字上はミドルペースでも前が止まる厳しい流れだったことは確かですが、1、2着馬に匹敵する非凡な瞬発力でした。(JRA元調教師)

桜花賞を制し、ステレンボッシュの頭をなでてねぎらうJ・モレイラ騎手(撮影・加藤哉)
桜花賞を制し、ステレンボッシュの頭をなでてねぎらうJ・モレイラ騎手(撮影・加藤哉)