皆様、いかがお過ごしでしょうか。

「ダービーに始まり、ダービーに終わる」という言葉があるように、競馬人にとって大変重要なレースである東京優駿(日本ダービー)。今年もその頂点を目指す3歳馬たちの熱いレースが始まろうとしています。

それと同時にこの時期は、来年のダービーを目指す2歳馬たちが続々とデビューし始めます。新馬戦では、ゲートが開いてからワンテンポおいて出てきたり、走っている途中で何かに驚いたり、真っすぐ走れなかったりと初々しさや若々しさが見えて、今でも思わず「頑張れ! 真っすぐゴールまで」と声が出てしまいます。

POGをされている方や一口馬主様をされている方は、もうすでに来年のクラシック候補を見つけて応援されていることでしょう。そしてきっと同じ気持ちでレースをご覧になっていはるのではないでしょうか。

実は私、かなりの緊張屋で厩務員さんの時はレースの前になると胃を痛めたりお腹を壊したりしてかなり大変でした。レース前は寝られないぐらい緊張して、レースの前に何度も御手洗いに行く感じでした。走るの私じゃないのにね(笑)。何度も御手洗いに行くので、ローレルゲレイロの担当厩務員さんに「大丈夫やから、お前が落ち着かんと馬に伝わる」とよく声をかけてもらった事を思い出します。

そんな私が特に緊張するのは新馬戦でした。担当馬にとっては初めての競馬場、装鞍所、パドック、お客さん、そしてレース。どんな反応をするかは予想していますが、相手は生きているのでその通りにはなかなかいきません。なので、ものすごく神経をとがらせていました。「なんでそこまでなるの?」と聞かれることがあるのですが、これは私自身が初めての人や環境がとても苦手だという事もあります。なので新馬ちゃんと自分を重ねてしまうのだと思います。しかしながら先日、「初めてが苦手」などと言っていられない経験をしました。というのも産駒と初の体験保育なるものに行ってきたのです。

初めての環境に初めて競馬つながりのない人間関係。今まで、お馬さんと関係無い話は推しの話以外したことがなく、正直ちゃんと人とお話できるか不安になりました。案の定、前日にお腹を壊し、当日出発ギリギリまで御手洗いにこもるという失態をしてしまいました。私の体験保育でもないのに(笑い)。

結局、産駒はすんなり環境に慣れ楽しんでいましたが、私はオロオロ、キョロキョロするばかり。ほろ苦いデビュー戦となってしまいました(笑い)。帰りの車の中で「楽しかったね」という産駒の声を聞きながら、産駒はこれからたくさんの「初めて」と出会っていくんやな。それと同時に私も「産駒との初めて」を経験するんやし、毎回御手洗いに駆け込んでられへん! 頑張れ、私。と心でつぶやいておりました。なんのこっちゃ(笑い)。

話がだいぶ違う方向にいってしまったので、競馬のお話に戻しましょう。苦手な初めてもあれば、うれしい初めてもあります。少し前のお話になりますが、高松宮記念をナランフレグ号で優勝された丸田恭介騎手、そして管理されている宗像調教師が共にうれしい初めてのG1制覇。関係者の皆様本当におめでとうございます。

私が競馬学校に在学中、丸田騎手も騎手候補生として競馬学校にいはりました。多くの交流はなかったですが、たまにお話しすると真面目で素直で、笑顔と丸刈りのとてもかわいかった姿が印象に残っています。当時はマルちゃんと呼んでいたのでここでもそう書かせていただきます。

デビューされてからは、私は栗東、マルちゃんは美浦なのでお会いすることもなかったのですが、ご活躍はTVで拝見していました。その姿を見るたびに「髪伸びてはるわ」とか「めっちゃお兄さんなってはるな」なんて勝手に言いながら応援していました。お前は何者やねんと言われそう(笑い)。

そうして応援していたマルちゃんが高松宮記念で初G1制覇。TVの前で産駒がビックリするほど声が出たのは言うまでもありません。騎手候補生の時の少年の記憶のままマルちゃんなんて気安く言うてたけど、丸田騎手と言わな失礼やなと反省しつつTVを見ていると、スタンド前に戻ってきた丸田騎手がガッツポーズをしはりました。少しぎこちなく見えたけど、マルちゃんらしくてかっこいいなと感じました。その後の勝利騎手インタビューで涙を流しながら宗像先生や関係者の方々へ恩返しが出来たと答えられている姿を見て、丸田騎手のカッコよさは変にカッコつけず、素直で真っすぐな所やなと改めて感じました。そしてその素直で真っすぐな所はかわいかったマルちゃんの頃から変わらないんやろうなと思いながら、私ももらい泣きしました(笑い)。

その後仕事から帰宅した相方さんに興奮冷めやらぬまま「マルちゃんすごかったね」と話していると、競馬学校時代、丸田騎手と交流のあった相方さんがお祝いメールを送り、最後に「坂井千晃(妻)も喜んでいる。」と送ると「千晃さんにもありがとうございましたとお伝えください」と返ってきたそうです。丸田騎手が私を覚えてはるかはわかりませんが、私にまで返してくれはったことがとてもうれしかったし、これからもますます応援しようと思うのでした。

さて今回は、この舞台に立つ3歳馬たちにとっては人生で1度きり、初めての日本ダービー。緊張と興奮で眠れそうにないですが、レース前には御手洗いをすませて、TVの前で正座し気合を入れて見ようと思います(笑い)。

それでは今回はこの辺りで。皆様、ごきげんよう。

(左)笑顔と坊主頭の可愛かったマルちゃんです。(右)スタンド前で丸田騎手はガッツポーズしはりました
(左)笑顔と坊主頭の可愛かったマルちゃんです。(右)スタンド前で丸田騎手はガッツポーズしはりました