ついに日本馬が砂のドバイワールドCを制した。ウシュバテソーロ(牡6、高木)が海外初遠征で偉業を成し遂げた。直線で差し切り5連勝、G1・3連勝。日本勢としては11年ヴィクトワールピサ以来12年ぶり2度目の勝利。12年前はオールウエザーで、ダートで歴史的な1勝を挙げた。今後は凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月1日=パリロンシャン)を視野に入れる。

       ◇       ◇       ◇

美浦から世界一のダート王が誕生した。ウシュバテソーロだ。スタートから最後方を追走して3コーナーすぎに進出すると、最後の直線は大外から一気に脚を伸ばした。早めに抜け出したアルジールスを捉え、残り100メートルは独走態勢。昨年の覇者で米国のカントリーグラマーなど世界の強豪、日本のライバルを突き放し、日本勢12年ぶりの快挙のゴールを駆け抜けた。約9億4000万円の1着賞金もゲットした。

騎乗した川田騎手は同馬の首筋を何度もたたき、歴史的瞬間を祝福。その後の馬上インタビューでは英語で答えた後、あらためて「日本の皆さん、ありがとうございました」と高らかにガッツポーズ。笑顔を輝かせ、初コンビを組んだパートナーをたたえた。

日本の誇りがあった。サウジC覇者のパンサラッサなど、同一海外競走としては日本馬過去最多8頭での挑戦。2、3着に海外勢が入ったように、異国の地の一戦は強敵ばかりだった。日本人騎手として騎乗したのは、吉田豊騎手と2人のみ。鞍上は「ウシュバテソーロが頑張ってくれたおかげで、世界一のレースを勝つことができた。日本の騎手も世界レベルであるということも、改めて馬とともに示すことができました。誇りに思っています」と力を込めた。

夢物語はこれからも続く。高木師は「順調にいけば、検討するつもりです」と凱旋門賞への出走を口にした。オーナーサイドも前向きという。昨年4月にダートに転向して、1年足らずで一気に世界の頂点に立った。芝でも3勝を挙げ、父は凱旋門賞2着2回のオルフェーヴル。夢を広げたウシュバテソーロの新たな挑戦が、大きく注目される。

■生産の千代田牧場「うそだろ」

ウシュバテソーロの生産者で千代田牧場(北海道新ひだか町)の飯田正剛社長の喜びも大きかった。レースは自宅で観戦。最後の直線、外から一気の末脚に「うそだろうなと思いました。あの位置からまくるのは難しいですからね。このメンバーで勝つのも難しいですから」と驚いた。今回の勝利には、過去の鞍上の努力があったという。「オルフェ産駒らしさがあったんです。それでも若い頃は特に江田照騎手が育ててくれた。それがつながった」と感謝を述べた。