金子真人ホールディングス(株)に2億7000万円(税抜き)で落札されたグリーンバナナズの2022(牡)は全姉アウダーリャがジャンロマネ賞、BCフィリー&メアターフを勝っている血統馬だ。ただ、JRAで走ったウートンバセット産駒はまだ1頭(未勝利)しかおらず、未知数な面が多い。果たして、どのような活躍をしてくれるのだろうか。

日本で走った産駒が少ないだけで、ウートンバセット自身はまったく新しい種牡馬ではない。今年15歳。現役引退後にフランスで種牡馬入りし、初年度産駒から英愛チャンピオンS制覇のアルマンゾルなど活躍馬を輩出。種牡馬初年度の12年は種付け料がわずか6000ユーロだったが、3年前にアイルランドのクールモアがトレードで獲得し、現在はクールモアを代表する種牡馬になっている。23年の種付け料はノーネイネヴァーの17万5000ユーロに次ぎ、同種馬場で2番目に高額の15万ユーロに設定されている。

ウートンバセットは08年に英国で生まれたイフラージ産駒。10年夏に英国でデビューし、1200~1300メートルで4連勝。2歳シーズンの締めくくりとなったフランスのG1ジャンリュックラガルデール賞も制し、5戦無敗の成績を残した。

2歳時に5戦無敗でG1を制した馬にもかかわらず、10年の欧州年度代表馬表彰(カルティエ賞)で最優秀2歳牡馬には選出されなかった。なぜか。それは同世代に怪物フランケル(現役時に14戦無敗)がいたため。

3歳初戦はフランケルの勝った英国の2000ギニーではなく、フランスの2000ギニー(プールデッセデプーラン)に向かい、断然人気に推されたものの、5着で初黒星。続くロイヤルアスコット開催のセントジェームズパレスSでフランケルと初対戦するも7着に敗れた。このとき、日本から遠征していたのが、前年の最優秀2歳牡馬で、NHKマイルC覇者のグランプリボスだった。8着に敗れたグランプリボスだったが、戦った相手は素晴らしい馬たちがそろっていた。本当に強い馬たちに勇気を持って向かっていった経験が、世界で活躍する現在の矢作厩舎の礎となっているのだろう。あらためて、グランプリボスの挑戦をたたえたい。

ウートンバセットはセントジェームズパレスSの後、モーリスドギース賞5着、ヘイドックのスプリントC13着で現役を引退。4歳シーズンは4戦未勝利に終わり、12年からフランスでけい養された。種牡馬としての期待度は同世代のフランケルとは比べものにならないほど小さかったはずだが、産駒の成功でのし上がってきた。いつの日か、たたき上げの種牡馬ウートンバセットの産駒と良血ぞろいのフランケルの産駒、そして、グランプリボスの産駒がともに日本のターフを駆け抜けるシーンを見られたのなら…、胸熱だ。