1番人気サトノダイヤモンド(牡3、池江)が直線で力強く抜け出し、G1初制覇を果たした。勝ちタイムは3分3秒3。池江泰寿師(47)は来年の凱旋門賞挑戦を表明した。クリストフ・ルメール騎手(37)はクラシック初勝利で、所有する里見治(はじめ)オーナー(74)はG1初制覇。皐月賞馬で2番人気ディーマジェスティ(牡3、二ノ宮)は4着だった。
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京都競馬場は曇り空だったが、サトノダイヤモンドが輝いた。鞍上のステッキに応え、最後の直線で外から迫るディーマジェスティなどライバルを突き放す。ゴールの瞬間は決定的な2馬身半差。「日本のクラシックを初めて勝つことができた。すごい大切なレース。ついに彼はG1を勝ちました」。牡馬クラシック最後の1冠を制したルメール騎手は瞳を潤ませ、興奮を隠せなかった。
ディープインパクト産駒初の菊花賞制覇。3000メートル以上の平地競走で未勝利のジンクスを破った。「ペースがあまり速くなくて、みんな馬が掛かっていたので、(2周目)4コーナーまでちょっと心配でした。直線は大きなストライドだったし、すごい反応だった」(同騎手)。3番枠からスタート後は好位を確保、スタンド前もスムーズに通過した。向正面で上昇を開始した他馬に惑うそぶりもまったくなかった。
管理する池江師にとっても、11年オルフェーヴル以来となる菊制覇で、来年以降のために負けられない一戦だった。「完璧に乗ってくれた」と、まずは鞍上をたたえた。秋初戦の神戸新聞杯は僅差の勝利だったが、池江師は「思い描く理想のステイヤーの形になった。馬が厳しいメニューに応えてくれた」と自信があった。皐月賞は直線の不利で3着、ダービーは落鉄しながらも2着。春2冠は惜敗だったが、「全能力を出し切ればという思いがあった」と振り返る。年内はあと1戦の予定。有馬記念(G1、芝2500メートル、12月25日=中山)か12月11日の香港カップ(G1、芝2000メートル、シャティン)、香港ヴァーズ(G1、芝2400メートル、同)が候補に挙がる。そして「来年は凱旋門賞を視野に逆算してローテーションを組んでいく」と、日本馬初の悲願達成にも意欲を見せた。
名前の由来となった美しい流星が輝くスターホースに、ルメール騎手は「彼の事が大好き。頭がすごくいいし、友達みたい。別のG1も勝てるし、(凱旋門賞の)2400メートルも大丈夫。もちろん乗りたい」と最大限の賛辞を贈る。13年セレクトセールで2億3000万円(税抜き)で落札された素質馬。今度は日本競馬、そしてディープ産駒の至宝として注目される日々が始まった。【木南友輔】
のべ36頭…里見治オーナー「舞い上がりました」
ついに悲願がかなった。里見治オーナーは黒帽2枠に入ったサトノダイヤモンドと同じ、黒のスーツで表彰台に立った。のべ36頭目で勝ち取った初のG1。同オーナーは「ゴールの瞬間は舞い上がりました」と万感の思いを語った。
遠い栄冠だった。92年に馬主免許を取得し、G1は2着3回が最高。「このレースで勝てないと、これからの競馬人生がどうなるのか」と、祈る気持ちで愛馬を見守った。たった8センチ、鼻差に泣いたダービーから一転、2馬身半差の完勝だ。「これからはかなり大きな夢が見られる。海外とか将来、種牡馬とか。馬が何ともなければ有馬記念に行ってもらえれば」と柔和に笑った。暮れのグランプリで“国内最強”の称号が当面の夢になった。
ディープ産駒初V&5組目の親子制覇
ディープインパクト産駒はこれまで平地芝3000メートル以上の競走にのべ47頭が出走し、未勝利【0.8.5.34】だった。菊花賞も過去19頭(+今年5頭)が挑み、13年サトノノブレスと15年リアルスティールの2着が最高。サトノダイヤモンドが初めて「距離の壁」を打ち破った。これにより、05年に制した父との親子制覇を達成。菊花賞の親子制覇は父セントライト-子セントオー、父トサミドリ-子キタノオー、キタノオーザ、ヒロキミ、父シンザン-子ミナガワマンナ、ミホシンザン、父ダンスインザダーク-子ザッツザプレンティ、デルタブルース、スリーロールスに続く5組目。
またこれで、世代限定G1(阪神JF、朝日杯FS、桜花賞、皐月賞、NHKマイルC、オークス、ダービー、秋華賞、菊花賞)史上初の完全制覇となった。
◆サトノダイヤモンド▽父 ディープインパクト▽母 マルペンサ(オーペン)▽牡3▽馬主 里見治▽調教師 池江泰寿(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 7戦5勝▽総収得賞金 3億7156万2000円▽主な勝ち鞍 16年きさらぎ賞(G3)、神戸新聞杯(G2)▽馬名の由来 冠名+宝石名。流星の形から連想
(2016年10月24日付 日刊スポーツ紙面から)