「“これ”に行くからジャパンCはなし…。今からアイルランドです」。週初めの夕方、世界を忙しく飛び回っている日本の生産者、いつもお世話になっている方からメッセージが届きました。

ちょうど2カ月前に書いた記事。

【美浦便り】ニアルコスファミリーが繁殖牝馬を整理売却へ…日本とのかかわりも深い大馬主

ここで書いたゴフス社のノベンバー・ブリーディングストック・セールが24、25日の日程でアイルランドのキルデアで行われます。ニアルコスファミリーの大量の牝馬が上場されるのは24日の金曜日。「ニアルコス・ドラフト」と銘打たれ、冊子も作成されています。

歴史的な一戦になる可能性もある今年のジャパンC。ホースマンとして見たい気持ちを抑えて、日本の生産者、ブラッドストックエージェントたちは海を渡って、決戦の舞台(セール)へ行きます。

前回の記事を読んだトレセンの某厩舎の助手、N君が言いました。「僕、ニアルコスの勝負服、シブくて、すごい好きだったんですよねえ…。紺(ダークブルー)と水色(ライトブルー)のたすきと、白い帽子と。カッコいいんだよなあ…」。

自分がお世話になっている方(アイルランドに向かった人)はメッセージとともにゴフス(goffs)社がつくった「ニアルコス・ドラフト」のプロモーション動画を送ってきてくれました(動画共有サイトなどで見られるので探してください)。

ヌレイエフやミエスクの走っている姿にナレーションが入り、今回上場される馬たちの牝系がいかに素晴らしいのかを伝える映像です。映像のシメ、最後に出てくるのが、おそらくディヴァインプロポーションズのマルセルブーサック賞のゴール前。その鞍上では何度も見たことのある顔の輪郭のジョッキーが勝利の瞬間、ニヤッと笑みを浮かべます。そう、クリストフ・ルメールです。

今は日本競馬の顔の1人となっているクリストフ・ルメール騎手。若い頃から母国フランスで頭角を現し、ニアルコスファミリーの勝負服も似合っていたし、アガカーンの緑の勝負服で主戦ジョッキーだったこともありました。サンデーレーシング、キャロットファーム、社台レースホースなど、どのオーナーの勝負服も似合いますが、今は、やはりシルクレーシングでしょうか。

木曜朝、東京競馬場は外国馬の共同会見。今年はイレジン1頭ですが、ジャパンCへの参加を待望していたマリー・ヴェロンの存在で華やかです。

日刊スポーツがイレジンの紹介を1面で報じたことをメチャメチャ喜んでくれたゴーヴァン師。イクイノックスのルメール騎手については「私は特別親しい関係ではないですけど、マリー・ヴェロンがルメールにいろいろ教わってくれていると思うので、頼もしいですよ」と話していました。

ヴェロン騎手は今、24歳。3年前、彼女がフランスの女性騎手年間最多勝利記録を更新し、いずれ来日するだろうなと思っていましたが、今年の夏のワールドオールスタージョッキーズで待望の初来日を果たし、秋にはジャパンC参戦。一気に日本における存在感を増しています。今週の取材中、ゴーヴァン師の言葉の端々にマリー・ヴェロン騎手への絶大な期待感、信頼感が含まれているのを何度も感じましたが、振り返ると、彼女が20年に新記録の73勝目を挙げたとき、騎乗していたのはジャン・ピエール・ゴーヴァン厩舎の馬でした。

実はルメール騎手がジャパンCに初めて騎乗したのが、今の彼女と同じ24歳の時(03年アナマリー17番人気12着)。共同会見の質問でそのことを伝えると、「ルメール騎手は若い騎手にとって、あこがれの存在です。私も彼のことを尊敬しています。彼のようなキャリアを積むことができれば」と笑顔で応えてくれました。

来る人あれば行く人あり-。さあ、今日はジャパンCの枠順が決定。ウンウンと頭を悩ませます。【木南友輔】