朝日酒造/長岡市
「設備を生かすのは人です」と製造部長の安沢義彦さん

 信越本線の来迎寺駅から朝日酒造へ向かう途中には、左手の里山にもみじ園、酒蔵の手前には創立者である平沢與之助が昭和初期に建てた松籟閣(しょうらいかく)がある。もみじ園の整備や松籟閣での茶会など、朝日酒造は地域とともに自然や文化を守り育んできた。

 朝日酒造には朝日蔵と松籟蔵の2つの蔵があり、2人の杜氏が蔵人を束ねる。朝日蔵杜氏は山賀基良さん、松籟蔵杜氏は大橋良策さんだ。その製造全体の責任者である製造部長の安沢義彦さんが朝日蔵を案内してくれた。

 朝日蔵は純米大吟醸の久保田萬寿など純米系の高級酒を主に製造している。米が最初に水に出合う、酒造りの起点となる洗米・浸漬室は昨年設備を一新。米への異物混入を防ぐ精度を高めた。「おいしく飲んでいただく前提として、安全・安心への取り組みは追求し続けなければなりません」と安沢部長。麹室、酒母室、そして仕込み室へ。

 ずらりと並ぶ48本のタンクの中央1列が今回の1本「ゆく年くる年」だ。今年収穫された五百万石で最初に仕込む酒で新潟県内は11月24日出荷予定。「いわばボージョレ・ヌーボーのような酒です」の言葉通り、全国にこの酒を待ちわびているファンがいる。ぬる燗(かん)もおすすめで「ほんのりぬくい燗で華開きます」と安沢部長はほほ笑む。今年の米を把握する前に造るため、造り手の経験値、すなわち力量がすべて反映される酒でもある。

 造り蔵とは別棟の、出荷まで酒を貯蔵するタンクが並ぶ貯蔵棟は、もみじ蔵、ほたる蔵に、2012年にいなほ蔵が加わり、徹底した貯蔵管理がなされている。最高においしい状態で飲み手に届けるために、より高みを目指す。【高橋真理子】

[2016年10月29日付 日刊スポーツ新潟版掲載]