阪神が中日の2年目山本拓実(19)にプロ初勝利をプレゼントして敗れた。しかも、甲子園に通い詰めた元虎党というから、余計に歯がゆい。日刊スポーツ客員評論家で、85年日本一監督の吉田義男氏(86)は、1点を追う5回の反撃機で青柳に代打を送らなかった采配の消極性を指摘。さらに開幕から「4番大山」で教育的起用を続けるベンチの我慢も限界に近いのではと推察した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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これだけ下位の中日に負ければ上位浮上も難しくなってくる。5勝11敗。反撃ムードが一気にしぼんだのは1点を追う5回だ。1死一、二塁。青柳が痛恨のバント失敗で併殺を食らった。

吉田 あそこは文句なしに代打でしたな。結果論ではない。中日山本も苦しいところだった。阪神としてはここのところリリーフをつぎ込んでいるし、青柳との信頼関係もあるかもしれない。しかし、チームとして攻撃型に転じるためのソラーテ獲得なわけで、その意味を考えたら、5回のチャンスは高山も控えていたし、ピンチヒッターで勝負ですわ。

前日30日はソラーテの逆転サヨナラ本塁打で劇的な勝利を収めた。しかし、遊撃では2つのエラーを犯し、この日は「2番二塁」で起用。代わって今季二塁で86試合に出場していた糸原を遊撃に回す布陣だった。

吉田 ソラーテの遊撃の守備は厳しいですな。ひと言いわせてもらうと、ショートには“品格”も必要ですわね。品? はい。ただそれを感じませんでしたな。二塁? まぁ、無難だが、ただ俊敏性という点では厳しい。これからも内野を動かさざるを得ないのだろうし、これは編成の問題もかかわってくる。守備を軽視しているとまでは言わないが、今年は二遊間を中心にセンターラインの強化をテーマに戦ってきたはずだ。それが揺れ動いているのが残念でなりませんな。

かつて大リーグが来日した際、現役時代にショートだった吉田の守備は「ファインアート」と表現された。その名手だけにリーグワーストの83失策がたまらなく悔しい様子だ。

吉田 せっかく糸原も二塁に落ち着いたと思っていたが、あの動きだとショートは難しいだろう。それにベンチがこだわってきた大山の「4番」だが、その辛抱も限界を感じているように思いますな。でもその代わりが見当たらないのがつらい。ここからのペナントレースはあっという間です。もう開き直るぐらいの気持ちで、ここからのセ・リーグを混戦に持ち込みたいものです。

6回裏阪神2死一塁、中飛に倒れた大山に視線を送る矢野監督(撮影・上田博志)
6回裏阪神2死一塁、中飛に倒れた大山に視線を送る矢野監督(撮影・上田博志)