打てない、守れない虎の無残な姿は、まるで戦意を喪失したかのように映った。シーズン25試合目の完封負けは球団新、76失策は今季もリーグ最多。ついに悲願の優勝は風前のともしびになった。

吉田 今年もっとも内容の乏しい、最悪のゲームでした。これだけ球場に足を運んで応援していただけるファンがいるのに、その前でこのような恥ずかしい試合をしてはいけなかった。またその責任感と自覚が伝わってこない。だれかが叱らないと。打てなくても、エラーしても、涙して悔しがる選手が見当たらない。それがまた歯がゆいじゃないですか。なんとも思ってませんのか? だってまだリーグ優勝、日本一になるわずかな望みが残されてるんですよ。少なくともわたしはあきらめていないし、そういう視点で見ています。それがこれでは情けないし、がっかりですわ。

まだ1点ビハインドだった3回の守りが痛すぎた。2死二、三塁、5番宮崎に対して2ボールになった時点でベンチは申告敬遠を指示。塁を詰めた直後に、新人森木が楠本に右2点二塁打を浴びた。なおも2死二、三塁から戸柱の二塁へのゴロを処理した山本が、マルテに悪送球で2者生還を許した。

吉田 あそこで3点差で踏みとどまるのと、5点差に引き離されるのでは大違いでした。そもそも森木はまだまだ早い。DeNAを追いかけるのにファームから秋山の先発もあるかなと思っていたが…。失策数が多いのは今年に限ったことではないが、やたらと記録に表れないエラーが目につく。優勝するようなチームは当たり前のことを当たり前にこなすが、チーム全体が甘いのでしょう。

8回1死一、二塁、代打大和の投ゴロに併殺を狙ったが斎藤の送球を、二塁から遊撃に回って、ちゅうちょしてベースカバーに入った山本が落球。その直後に桑原の2点打で突き放された。ちなみに阪神は昨季まで4年連続リーグ最多失策を記録している。

吉田 だれが失策したという問題でなく、やはりポジションを代えすぎている弊害と言わざるを得ない。複数ポジションをカバーさせるのは、その監督の野球観です。でも、どこも中途半端になった挙げ句、勝負どころでミスが出て敗れては、チームにも、本人にもプラスにならない。特に内野の守備を軽視し過ぎているように感じます。次の監督、コーチは、厳しく指導し、克服させることのできる人材でないと…と思いますが、ひとまずそれは先の話。とにかく今は可能性のある限り、あきらめずに残り試合を戦い抜いてほしいです。【取材、構成=寺尾博和編集委員】

DeNA対阪神 3回裏DeNA2死二、三塁、戸柱の打球を悪送球し、走者2人の生還を許す二塁手山本(撮影・鈴木みどり)
DeNA対阪神 3回裏DeNA2死二、三塁、戸柱の打球を悪送球し、走者2人の生還を許す二塁手山本(撮影・鈴木みどり)
DeNA対阪神 整列しスタンドにあいさつする阪神ナイン(撮影・足立雅史)
DeNA対阪神 整列しスタンドにあいさつする阪神ナイン(撮影・足立雅史)