<SMBC日本シリーズ2019:巨人3-4ソフトバンク>◇第4戦◇23日◇東京ドーム

ソフトバンクは強かった。巨人に無傷の4連勝で「令和元年」の日本シリーズを制した。92年の西武以来のシリーズ3連覇に加え、史上初となる2年連続「下克上」の制覇。ポストシーズンはクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの楽天初戦に敗れてからファイナルの西武戦、そして日本シリーズと破竹の10連勝で駆け抜けた。「圧勝」の秋だった。

「自分が後悔したくない」。工藤監督はそう言って鬼になった。ベテラン松田宣をスタメンから外し、内川には迷わず代打を送った。勝負どころでの選手起用は容赦なかった。2年連続してリーグV逸の悔しさが根底にあった。ただ「勝利」のためにタクトを振った。

最後の最後で頂点に立ち、ホークスナインの手で宙を舞った。15年の監督就任から5年で4度目の日本一の舞いである。最大の目標であるリーグV奪回はできなかった。歓喜の胴上げを見つめながらシーズンでも「非情」に徹していれば、V奪回は可能だったのではないかと、ふと思った。

監督業は「孤独」との闘いという。選手の顔色でタクトがにぶってはいけない。ホークスのコーチングアドバイザーを務める金星根(キム・ソングン)氏は言う。「失礼ですが、CSから工藤監督は監督らしい姿になりましたね」。韓国プロ野球で1000勝以上を挙げた「名将」は、この2年間、黙してチームを観察した。「(監督は選手に)面と向かって言えるか、どうかです。遠慮する必要はない。前に立つ人(リーダー)はすべての非難を1人で受け止めなければならない」。就任時に禁止していた茶髪や試合中のガムはいつの間にか緩和された。「和」を求めるがために妥協があったのかもしれない。

今後も厳しさという鎧(よろい)をまとい続けることができるだろうか。それにしてもホークスナインのポテンシャルの高さには、今さらながら恐れ入った。【ソフトバンク担当 佐竹英治】