2020年、ソフトバンクのシーズン120試合が終了した。3年ぶりのリーグ優勝が決まったのが10月27日。しかし、ナインは悲願を達成したのにもかかわらず、強さの勢いを止めなかった。残り9試合を7勝2敗。この間、驚異的に打撃力を上げた打者がいた。牧原大成内野手(28)だ。

この9試合は全試合に出場した。7試合に先発し、途中出場を含めて3打席以上打席に立ったのは8試合。その間の成績は29打数11安打で、打率は3割7分9厘となる。安打がなかったのはわずか1試合だけど、とにかく打ちまくった。工藤監督は優勝後も勝利を重ねるナインに対して「次なる目標に向かってしっかり調整していこうという気持ちが表れている」と目を細めていた。あまり目立たないが牧原はそれを体現していた。

10月31日の西武戦(メットライフドーム)で3安打の猛打賞を放った際は「ここ何試合はいい感じが続いているので、続けていけるようにしていきたいです」と話していた。立花打撃コーチも「自分のタイミングでバットが振れている」と好調の原因を説明する。牧原には「動き」を止めてはいけない理由があった。

今年は二塁手のレギュラー争いの1人としてキャンプから周東らと争ってきた。開幕スタメンを見事に射止め順調にスタートしたが、7月中旬に背中の張りなどで2軍調整。8月20日に1軍復帰を果たしたが1番二塁に周東が座り始めていた。「足では負けますが、レギュラーでは総合力ですから」と昨年末から周東へのライバル心をメラメラ燃やしていた男にとっては屈辱だったろう。二塁と遊撃をかけもちしながら、先発起用された試合では打撃をアピールしてきた。そして、優勝決定後の打率3割8分に近い打率につなげた。

牧原は2010年育成ドラフト5位で入団した。千賀、甲斐と「同期入団」の育成出身だ。周東ともポジション争いを繰り広げ、これからも俊足好打でチームを勝利に導くだろう。クライマックスシリーズから日本シリーズへの短期決戦では、キーマンとなる可能性は十分ある。【ソフトバンク担当=浦田由紀夫】