阪神梅野隆太郎捕手(30)にとって東京五輪は、「チーム一丸で戦う」ことを再確認する舞台だったようだ。

プロで初の日本代表として挑む前、明確に自身の役割について話していた。「自分ができることをしっかりやる。出る出ない関係なく自分がやれることを一生懸命、任された仕事をする。本当にシンプルに考えていきたいなと」。その言葉通り、チームでの働きはテレビの画面越しにも伝わった。

ブルペンで準備する投手の球を受け、リラックスさせるように言葉を交わす。味方が守備を終えれば、ベンチの前で手をたたいて迎え入れる。今季阪神では、ここまで1試合を除いて全てスタメン出場している梅野。リーグ戦ではあまり見ない光景だ。それでもサヨナラ勝ちの瞬間に満面の笑みで飛び出す姿を見て、心からチームのために徹しているのだと感じた。

金メダル獲得という最高の経験だけでなく、ブルペンやベンチで過ごした時間から学ぶことも多かったようだ。ブルペンでは個性豊かな投手の球を受けながら、明確な意図を持って高さやコースに投げ分ける姿を目の当たりにした。「レベルの高いピッチャーをたくさん受けられたので。タイガースのピッチャーの幅というのをキャッチャーとして引き出していけたらなと」。

ベンチでは仲間を鼓舞するとともに、自分の準備を行う。同じ捕手の甲斐が帰ってくると情報を聞きながら、先発出場した米国戦で感じたことは決勝に向けて共有した。「ベンチから後から行ったり、準備をしたり。そういうのも、後から行く人がいるからこそ戦えるんだなと感じることもできたし、1人1人の役割をチームとしての1試合にどう生かしていくかというのは、すごく肌で感じた部分がある」。頂点に立つにはチーム全員で戦うことが必要だと、改めて実感した。

「最後までその1試合を戦い抜く、そういうものが大事じゃないかなと。今タイガースがそういうのを目指しながらやっているので、本当に頂点を取れるように、タイガースにそういう気持ちをどんどん伝えていけたらなと思う」。激しい首位争いの中で苦しい試合も続く。そんな時にかけがえのない経験が、チーム一丸で戦う上で生きるはずだ。【磯綾乃】