<楽天2-1ソフトバンク>◇13日◇楽天生命パーク

気温15度ほどまで下がった仙台の夜風はしみたことだろう。連覇の夢から下方修正した3位争いだが、ソフトバンクは楽天に痛恨のサヨナラ負けを喫してしまった。1点を守り切れず、ホークスは「逃げ切り」に失敗した。7回0封の先発マルティネスからブルペン陣に託したが8回に同点とされると9回に守護神森が痛打されてしまった。

10月13日。現役時代の工藤監督を「アニキ」と慕った男の21回目の命日だった。「炎の中継ぎ」と呼ばれたダイエー藤井将雄投手(享年31)が、00年のこの日、肺がんのためにこの世を去った。逃げ切れなかったホークス戦を見ながら、天国の藤井のことを思った。

ホークスが福岡移転後に初優勝した99年には59試合に登板し26ホールドを挙げ初Vの立役者ともなった。連覇の夢は断たれたとはいえ、工藤監督が率いたホークス7年間の戦いぶりはしっかり空の上から見守ってくれたはずだ。「すごいじゃないですか」とたたえているだろう。ブルペンの厳しさを知る男だけにこの日の敗戦でもリリーフ陣を優しく見守ってくれただろうか。

藤井は94年ドラフト4位でダイエーに入団。1位獲得を目指した駒大・河原が巨人入り確実となり、1位城島の強行指名となった。球団の指名予定は3人だった。だが、王新監督の強い要望もあり1枠の「投手補強」が急きょ決定。担当スカウトさえ知らされない藤井指名だった。

振り返れば「縁(えにし)」というのは偶然の産物かもしれない。プロ5年目に藤井は自身最多登板を果たし、王ダイエー初Vの歓喜の輪に加わった。今季、ホークスはリーグ連覇の夢は途切れた。先日のドラフト会議では支配下、育成含め計19人の新人を指名した。育成強化を掲げながら、求められるのは来季以降のチーム再建だろう。

思いのほか秋の訪れは早かった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

ダイエー藤井将雄投手(95年9月12日撮影)
ダイエー藤井将雄投手(95年9月12日撮影)