杜(もり)の都に帰ってきたルーキーコーチがいる。楽天雄平2軍打撃コーチ(38)。ヤクルト一筋19年で、昨季引退。東北(宮城)から02年ドラフト1巡目でプロ入りするまで、3年間生活した仙台へ戻ってきた。「僕の中では原点だと思うので、初めてのコーチで帰ってくることができて、恩返ししたいという気持ちを持っている」と意気込んで、楽天のユニホームに袖を通した。

1軍では同学年の岸が先発ローテを守り抜いている。指導者界ではまだまだ新米の若手。選手と年齢が近いこともあり、とにかくコミュニケーションを取ることを大切にしている。「選手の気持ちや考え方とか。そこをしっかりとまず把握することは一番大事にしていますね。その中でアドバイスすることももちろんありますし、強制するだけじゃなくて提供することもすごく意識してやっています」と表情を和らげる。

14年には打率3割1分6厘、23本塁打、90打点でベストナインを獲得。経験に基づいた助言で選手の背中を押す。6月18日、渡辺佳が2軍にやってきた。1軍では打率2割0分8厘と結果を残せず。渡辺佳は「今の1軍のメンバーに勝てないと思った。まず力の差もそうですけど、ここぞの1本とか、ここでフォアボールがほしいときに取れるバッターもいますし、アウトのなり方がいい選手もいっぱいいますし。その中で全部中途半端かなという、なにも抜け出せてないなというものがあったので、なにかみんなにないものを見つけようかなというか。印象に残るバッターになりたい」。悔しさが残る再調整となった。

ファームでは、振り込むことに加え、バットの軌道や、試合での打ち方などを一から見つめ直した。渡辺佳は「元々逆方向に打つのは自信があった。(雄平コーチは)そういう自分の特徴を引き出してくれるというか。僕が思っていた流し打ちとはまた違った感覚だった」と話す。スイングの感覚で新たな発見。追い込まれてから、いかに自分のバッティングをするか。雄平コーチと渡辺佳が会話を重ね、少しずつ修正していった。

渡辺佳は「自分の打ちたい方向に狙って打てたりとか、打ちたいように打てた」と手応え。6月18日からの2軍戦打率は3割1分6厘と数字を残し、7月24日に再昇格をつかんだ。1軍復帰後は6打数2安打で打率3割3分3厘、2打点。少ない打席ながら結果を残している。「僕の中で追い込まれたくないという気持ちが今年はあった。でも雄平さんと話させていただいて、追い込まれても大丈夫なように。そういう練習をしてきた」と目線を上げた。

ファームにはまだまだドラフト1位吉野や、前田の高卒ルーキー野手コンビや、近い将来の主軸有力候補の黒川ら、若手が汗を流している。これからどんな飛躍をしていくか。それを支えるルーキーコーチの手腕に注目だ。【楽天担当=湯本勝大】