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錦城学園・玉木監督 今年もいつも通り「一人二役」

<特別な夏・高校野球編(7)>

東東京大会の第4シード錦城学園は2回戦で大森学園に敗れ、先月29日に姿を消した。それでも玉木信雄監督(48)の「夏」は続いた。東京都高野連の理事の1人。今夏は駒沢球場の主任を任された。「負けた日は誰とも話したくなくてふて寝しました」と話したが、翌朝、試合開始の2時間前(午前7時)には球場に姿があった。

東東京大会の2回戦、大森学園戦で渋い表情のままグラウンドを見つめる錦城学園・玉木監督(左)
東東京大会の2回戦、大森学園戦で渋い表情のままグラウンドを見つめる錦城学園・玉木監督(左)

球場正面にテントを設営することで1日が始まる。出場選手や控え部員、保護者、報道陣の受付となり、検温などを行う場所だ。ベンチ内の消毒、審判員の交通費の支給等かかわる業務は多い。「今年は無観客なので、入場料を扱う仕事がない。その分は楽ですが」と言うものの、自チームをみる時間は限られる。

例年なら大会直前から部員とともに学内に泊まり込み、試合に臨んでいた。今夏は宿泊を伴う部活動が認められず「1人合宿」を続けた。「体育教官室にソファベッドを持ち込んで、寝起きしています。洗濯機はあるんです。食事は外食になりますけど」と笑う。

そうまでしての一人二役は自ら志願して始まった。理事長に「何でもやりますんで、使ってください」と申し入れた。30代半ば。07、08年と2年連続して初戦敗退した後のことだった。大会はどんな形で運営されていくのか。選手が力を発揮するためにも、裏方の一員となって、大会の流れを知ろうと思った。

監督就任4年目の06年にはこんな経験もした。初めて5回戦に進出すると、会場は神宮、テレビ中継が入った。試合前、大会委員から「ベンチから出ないで下さい」の指示が出た。驚いた。「言われるまま私も選手も何もできなかった。それまでベンチ前の素振りとか、動けていたのに」。試合は0-8の完敗だった。時に制約も入る。今年でいえば、時間制限(2時間20分)が設けられた。知らないでは対応できない。

毎年「野球漬け」になる夏。ここには夫人も娘2人も割り込めない。「家の方は女房に任せっぱなし。連絡もしませんし」。唯一の罪滅ぼしは毎年、お盆の時期に組み込む家族旅行だ。「今年は15日まで授業で、24日には2学期が始まる。行けるかなあ」。

東西東京大会は10日、東西対決で全日程を終えた。「みなさんがみてくれる。新しい出会いもありますから」。玉木監督は、一人二役にこんな喜びも見いだした。今夏、球児たちは甲子園への道を断たれながら、それでも戦いの場は得た。いつも通り、支える存在があって「空白の夏」にはしなかった。【米谷輝昭】

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