ファンサービス-。人気商売に携わっている以上、お客さんを大事に扱うのは当然。プロ野球の原点はファンである。一番大きな収入源は入場料収入。もう、タイガース人気にあぐらをかいている時代ではない。1人でも多くの人に足を運んでもらうための努力は必要不可欠。観戦に来場された人に「楽しかった」「面白かった」の満足感とエキサイティングなゲーム展開で、感動を与えられたなら大成功。満足感と感動は再度の来場に結び付き、その中にユニホームを着ている人との接点が含まれるなら、より以上ファンの気持ちを引き寄せることができる。

 自ら進んでファンサービスに励んでいる人がいる。掛布雅之2軍監督である。昨年もかなり力を入れてファンに接していたが“継続は力なり”今年も鳴尾浜球場で、甲子園球場で一緒に写真を撮ったり、快くサインに応じるなど精力的な行動が目につく。なかでも甲子園では球場内の見学ツアーで来場しているお客さんが、試合後(ウエスタン)チームの練習中にグラウンドを一角から見学するコースがある。同監督、若手がバッティングしている最中にもかかわらず「写真でも撮りましょうか」と必ず声をかけ、ツアー客の一人一人とそれも、その人のカメラでツーショット撮影に笑顔で応じている。 時間がきてグラウンドを去るお客さんの表情は満足感でいっぱい。互いの顔を見合わせて満面の笑み。「本当にありがたいですね」は営業部の浅井課長。球団にとって、このファンサービスは入場料収入につながるからありがたい。

 「選手はファンによって育てられる」は掛布監督が持つ持論。確かにファンの目が多ければ多いほど選手は手を抜けないし、息抜きもしにくい。選手・掛布とファン。こんな光景を毎年見てきた。

 キャンプ。バッティングもさることながらファンと一体化していたのは“特守”だった。3塁側ファウルグラウンドで一人。100本200本の個人ノックが始まる。右に左に容赦ない。クタクタになってもますます激しくなる。そのノッカー、実にうまい。いや意地悪なのか。捕れるか捕れないか微妙なところへ打ってくる。もう、こうなったら根性だ。何度も何度もダイビングキャッチを試みる。ユニホームは泥だらけ。捕れないと「コラーッ。しっかり捕らんかい」ノッカーから叱咤されるが、スタンドからは「もう少しや。頑張れ」の激励が、すると本人から間髪を入れず「もういっちょこい」自分の気持ちをノッカーにぶつける。ダイビングして捕球するものなら、スタンドから大声援と大きな拍手で盛り上げてくれる。スタンドとグラウンド完全に一体化する。「ファンを大事に」ここにも同監督の持論があるのだ。

 試合でもスタンドとグラウンドが一体となった時は勢いがある。必須条件はファンの来場だ。お客さんに何度も足を運ぶ気にさせるのは「ファンサービスでファンが最も喜ぶ勝利」を重ねることであり、選手の頑張りあるのみなのだ。そして、選手を評価する基準が「球場にどれだけのお客さんを呼べたか」であり、ファンサービスとは相通ずる。要するに皆さんもごぞんじのように、いい活躍を挙げた選手は勝ちゲームに貢献した確率が高いから、その年の年俸はぐっと上がる。オフの年俸闘争を見ていると、ユニホーム組はサラリーマンのようにも思えるが、実はいち事業主なのだ。

 最近は“KAKEFU”のネーム入りユニホームを着て来場するファンは多くなった。掛布監督。やはり人気者だ。甲子園球場ではスタンドから掛布コールが起こる。少々テレ気味に手を上げて応えているが、球場へたくさんのファンを呼んでいる。「ファンサービスは積極的にやるべきだね」持論どおり若手を育てている。今年も大山がデビューした。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)