元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載。59回目は「今季の反省、修正点と期待選手~セ・リーグ編」です。

2018年も大みそか。今季のセ・リーグは広島が3年連続9度目のリーグ優勝を果たした。巨人以外のチームのV3は初となったが、主力の丸がFAで巨人へ移籍し4連覇への道のりはどうか。セ6球団の今季の反省、修正点を振り返りつつ、来季のセの期待選手を挙げてみた。


【広島】

丸が残留すれば4連覇はより確実だったと思われるが、移籍しても穴を埋める選手はいる。戦力的には万全で、丸の代役には野間が成長。夏に丸が一時的にけがで抜けた際、野間が見事にカバーした。外野は右翼鈴木誠也、中堅野間、左翼が下水流、松山、バティスタら選手の状態と相手投手との相性など勘案して併用されると思われる。特にバティスタは99試合に出場し25本塁打。全66安打中25発は、3安打のうち1本が本塁打という驚異的な“柵越え率”。相手にとっても脅威だ。

若手の中でもソフトバンクから移籍してきた曽根海成は内外野をこなせる万能選手でウエスタンで打率3割1分7厘、1軍でも11試合で同2割7分8厘とブレーク気配。広島の選手層は厚く、19年も優勝候補筆頭だ。

投手陣は大瀬良が15勝7敗でセ最多勝投手に。ジョンソン11勝と2桁勝利は2投手だったが、岡田8勝、九里8勝、野村7勝、中継ぎのフランスア(47試合3勝4敗、19ホールド、防御率1・66)も要所でいい活躍を見せた。

<期待の選手>

高橋昴也に期待。ジョンソンはいるが国産左腕も1枚ほしい。今季6試合に先発し1勝2敗に終わったが3年目の来季、そろそろ頭角を現してほしい。


【ヤクルト】

先発が課題だ。今季はブキャナンが10勝11敗で唯一の2桁勝利投手。6勝7敗の原樹理も後半、良くなってきた。中継ぎの秋吉を放出し日本ハムから先発候補の高梨をトレードで獲得。先発を補強した。今季先発投手は39勝50敗、防御率4・32で勝利数、防御率はセ界最低数字。35ホールドの近藤、35セーブの石山とリリーフ陣は徐々に整備されつつあるだけに、先発さえしっかりしてくれば優勝もあり得る。17年に96敗したが今季75勝66敗2分けの2位に急浮上。思い起こせば広島3連覇が始まる前の15年ペナント覇者はヤクルトだった。打線はバレンティン、山田、青木、雄平、坂口、1年稼働できれば畠山、川端と猛者ぞろい。

<期待の選手>

来季2年目の村上宗隆が楽しみだ。17年秋のドラフト会議で清宮幸太郎を外したヤクルト、巨人、楽天の3球団から外れ1位で指名された逸材。今年11~12月に台湾で行われたアジア・ウインターリーグでは打点、本塁打の2冠王に輝き、プロの水にも慣れてきた。来季、三塁手で器用すれば川端との併用となるが、筒香クラスの和製大砲に一気に化ける気配も漂う。


【巨人】

丸のFA加入で攻撃陣は文句のない打線だ。いっぽう、中継ぎ以降の整備が課題だ。守護神がしっかりした投手を据えたいが、カミネロ、マシソン、アダメス、沢村…。7、8、9回の「勝利の方程式」をどう編成するか。

巨人は勝率4割8分6厘で3位。メルセデス(5勝4敗)が終盤、好投し何とかAクラスに踏みとどまったが、シーズン負け越しは06年以来8度目。15年から4年連続V逸は44、46~48年(45年は戦争で休止)03~06年に並び3度目の球団ワーストタイ記録だった。「球界の盟主」が復権できるか。

先発陣は2勝8敗と本調子にほど遠かった田口の復調に期待。終盤、好投した今村(6勝2敗)も飛躍できるか。けが明けの岩隈は先発6番手当たりで最初は首脳陣も無理させないだろう。

<期待の選手>

来季3年目を迎える先発候補の高田萌生に期待。秋季キャンプの韓国ハンファ戦では5回まで完全試合、6回10奪三振の好投で活躍を予感させる強烈デモ投球。年齢層が高くなりつつある巨人で来年21歳を迎える若手右腕の登場は待ち遠しい。菅野、メルセデスは計算できるだけに高田がハマるようならV奪回も視野に入る。


【DeNA】

昨季17年に今永11勝、浜口10勝の計21勝を稼いだ両左腕が今季ともに4勝ずつ。石田も3勝に終わり3人の左腕で計11勝と不本意な結果となった。ラミレス監督も大誤算だったに違いない。チームは4位と失速した。今季、新人王を獲得した1年目の東が11勝5敗で勝ち頭。東が結果を残しただけに今永、浜口、石田の不調が悔やまれる。来季は国産4人で「サウスポー王国」の存在感を示したい。DeNAはルーキーが活躍する傾向があり、ドラ1で獲得した東洋大・上茶谷にも期待がかかる。先発陣は17年にFA移籍した山口俊の人的補償で巨人から獲得した平良拳太郎が今季13試合に先発し5勝3敗と実力を発揮し始めたのはプラス材料。

打線はソト、宮崎、筒香、ロペスと強力すぎる顔ぶれ。投打かみ合えば優勝の可能性もある。

<期待の選手>

2年目を迎える神里和毅外野手に注目している。今季86試合に出場し打率2割5分1厘、5本塁打、15盗塁。足が使える貴重な選手で、神里が打線に入れば攻撃のバリエーションは増える。夏場に死球を受け、右足骨折でシーズン後半を棒に振ったが、フルシーズン戦う姿を見たい。今季の盗塁王はヤクルト山田哲人の33個。1年間通して打撃が安定してくれば盗塁王のタイトルも夢じゃない。


【中日】

13勝9敗、防御率2・99のエース・ガルシアが阪神へ移籍した。先発投手陣はかなりキツい。抑え候補もまだわからない。チーム防御率4・36は12球団最低。中継ぎも苦しい状況となっている。かつて投手王国と言われた時代もあったが、15年以降、防御率は下降の一途。15年→3・19、16年→3・65、17年→4・05、18年→4・36。投手王国再建へ与田新監督の手腕、球団の編成(補強)にも注目。

打線はまずまずの戦力だ。ビシエド、アルモンテ、平田、大島ら実力派ぞろい。17年新人王の京田は今季2年目のジンクスにハマったが、巻き返しに期待。また、投手では小笠原が秋に左肘の手術を終え、来季に向かう。今季5勝6敗、防御率4・11に終わったが、甲子園優勝投手のポテンシャルからすればこんなものではないだろう。

<期待の選手>

藤嶋健人が面白い。シーズン中、松坂がけがで先発回避し緊急登板となったが好投。ローテの谷間でも登板するなど19試合に投げ3勝1敗、防御率3・66はまずまずの数字。いろいろな場面での経験を19年に生かすことができれば。


【阪神】

17年に2位だった阪神が今季最下位に沈んだ。昨年のAクラスは中継ぎの奮闘があったからこそ。特にマテオが17年→防御率2・75から今季→同6・75へ。厳しい場面での登板が多かったが岩崎も17年→防御率2・39から今季→同4・94と数字を落とした。終盤、能見をセットアッパーに回してやりくりしたが、及ばなかった。昨年チーム最多となる12勝6敗の秋山も今季は5勝10敗。首脳陣の計算も狂っただろう。

糸井、福留とベテランは気をはいたがロサリオが不発だった。打線には外国人助っ人が不可欠だが、メジャー通算30発、エンゼルスからFAとなっていたジェフリー・マルテ内野手を獲得し補強。投手陣もオリックス西、中日ガルシアの両2桁勝利投手を獲得できたのは大きかった。投打にわたり、選手補強で課題克服に努める姿勢は評価できる。

中谷、江越、陽川、高山ら若手のいい選手がはじけそうではじけない…。誰か1人出てくれば打線も若返るが。

<期待の選手>

激励の意味も込めて高山俊に注目したい。このままで終わる選手じゃない、終わらせてはいけない。1、2年目で100試合以上出場し経験を積んだ今季がブレークかと思いきや、大ブレーキ。45試合出場で打率1割7分2厘に終わった。来年42歳になる福留の後継として期待される高山の巻き返しなるか。

18年オフのドラフト会議を見ても1位指名が藤原、辰巳と外してもなお外野手の近本を取りにいった。外野の若返りを重要視していたことがわかるだけに高山の意地を見たい。

◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。