日本対MLB 9回裏日本2死一塁、柳田はサヨナラ右越え2点本塁打を放つ(2018年11月9日撮影)
日本対MLB 9回裏日本2死一塁、柳田はサヨナラ右越え2点本塁打を放つ(2018年11月9日撮影)

「それやんか~」と思わず笑ってしまいました。大リーグ公式サイトが10日付で、日米野球において本塁打を放つソフトバンク柳田悠岐外野手を特集。それを紹介する記事が日刊スポーツのサイトに掲載されていました。

そこでは柳田の豪快なスイングにスポットを当てて映像も紹介しながら「型破り」「いかれたスイング」と称賛したという点でした。

「いかれたスイング」。まったく同じ感想を持ったのは今から6年前、12年の春先のことです。当時、私は日刊スポーツ大阪本社で「鳴尾浜支局長」という実際の肩書とは関係のない企画上の立場におり、ウエスタン・リーグを戦う阪神2軍の記事を書いていました。

その流れで遠征にも出掛けていたのですが当時、ソフトバンクが本拠地にしていた福岡・雁の巣球場で見た柳田の様子に腰を抜かしたのです。

阪神投手陣のボールを豪快にスイングするのですが、ことごとく空振り。それでも振りまくる。一体、なんなんだ。おかしなヤツがいる。いかれてるぜ。まさにそんな思いを持ったのです。

このとき柳田はプロ2年目。徐々に1軍に出始め、プロ1号などを放つシーズンになったのですが、そのときは正直、彼のことをまったく知りませんでした。プロフィルを見ると広島出身という。

広島カープが行うスカウティングのレベルの高さは知られたところ。その広島がとらなかった地元の選手なのか。とれなかったのか。いや、待て。ソフトバンクもスカウト力では負けていない。さて。すごいのか。どうなのか。その段階ではもちろん判断できませんでしたが、とにかく、そのプレースタイルや体のサイズには圧倒されました。

そんな興味もあって柳田と少しだけ話をしてみました。広島ファンではないの?

気さくに応じてくれた柳田の答えは「そりゃあ広島ファンです。緒方選手のファンでしたね」と言うではありませんか。

この欄を読んでいただいている方ならご存じでしょうが、緒方孝市(現広島監督)ならよく知っている人物です。

「じゃあ緒方が監督になったらカープに来れば」と言いました。すると柳田は「分かりました!」と固く握手をするでありませんか。ますます「いいヤツだ」と思ってしまいました。

念のため、書きますが、もちろんこの会話は冗談なのですが。

あれから6年。柳田がスーパースターになったのはもはや言うまでもありません。今年の日本シリーズはくしくも緒方率いる広島と柳田擁するソフトバンクの対決になりました。

その初戦が行われた10月27日。試合前、柳田に声を掛けてみました。

「それで、いつ広島に戻ってくるの?」。関係者に頼まれ、サインを書いていた柳田は「うわ、コイツや」と思ったかどうかは知りませんが、笑いながらこう言いました。

「オフの動向をしっかり見ていてください!」

昨オフにソフトバンクと3年契約を結んでいる柳田にすれば、これはもちろん冗談、少々“いかれた記者”に対するリップサービスなのですが、そういう度量の大きさも彼のいいところでしょう。

さて数年後、大リーグ入りがあるのか。それとも、まさかの広島移籍があるのか。それとも…。日米野球で存在感を発揮する「いかれた柳田」からプロ野球界は目が離せないと思うのです。

「2018日米野球」第2戦 2点本塁打を放つ柳田悠岐(2018年11月10日撮影)
「2018日米野球」第2戦 2点本塁打を放つ柳田悠岐(2018年11月10日撮影)