関甲新学生野球リーグの上武大が13日、伝統の「成人ノック」を行った。新成人の2年生39人が、3年生やOBから1人200本のノックを受けた。

ノックの中盤、河田達也マネジャー(3年=東京成徳大深谷)が「あれ、兄弟ですよ」と教えてくれた。ノッカーは小林勇太投手(3年=仙台育英)で、ゴロを受けるのは小林亮介内野手(2年=一関学院)。兄が打って、弟が捕る…というより飛んでいる。兄は左右に打球を振り、その厳しさにチームは盛り上がった。

弟は、違う先輩にノッカーをお願いしていた。その場の流れで兄がバットを握った。「うわ、来たか」と思った。高校時代は控え投手としてロッテ平沢らと甲子園準優勝を経験した兄は、もうプレーヤーではない。

「自分は今、学生コーチなんです」と少し寂しそうに切り出し、兄は表情を引き締めた。「弟が入ってきて、結果を出してくれればチームへの貢献になる。弟を育てるのも、自分の目標の1つです」。高校時代は東北屈指の遊撃手といわれた弟の夢を、サポートしていく構えでいる。

兄弟で師弟関係、そして普段は野球部の先輩と後輩でもある。部活では気軽に話すことはためらいがちだ。弟が「こういう時じゃないと兄弟の絆も深まらない。成人ノックをできて良かったです。今日の思い出は一生の宝です」と兄に感謝すると、兄も「一生ものです」と笑った。上州名物の「からっ風」を受けながら、小林兄弟の奮闘は続いていく。【金子真仁】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)