ファン感謝デーの様子をうかがいに甲子園に出掛けた。終了時には選手がグラウンドを手を振りながら1周した。球団関係者によると過去、この行為にクレームがついたことがあるそうだ。ファンから「何のために歩いてるんだ?」と電話が続いたという。

面白くなさそうに歩いていた選手が目立ったという“苦情”だった。そのためにグラウンド1周自体を行わない年もあったという。しかし今年は見る限り、いい感じで歩いていた。関係者も「よかったですね」と話していた。

若い選手が増えたこともあるが、やはり、指揮官・矢野燿大の影響は大きいと思う。ファンを喜ばせようと普段からファンサービスにも積極的だ。「矢野イズムは選手に浸透していると感じますね」とこの関係者は言った。

そんな矢野の2年目に向け、キャッチフレーズが発表された。「勝」と「笑」をかけたユニークなもの。コーチたちと相談したというが、いかにも矢野らしいと思った。

意味なくヘラヘラ笑っていては仕方がないが、今年、全英女子オープンのタイトルを獲得したプロゴルファー渋野日向子が証明したように笑いながら勝つのはパワーを周囲に与える。

感謝デーで展開されたコーナーを見ていたらシーズン中、あまり笑顔を見たことのない大山悠輔がニコニコしていた。大山のものまねをする少年も出てきて面白かった。「こんな笑顔が自然に出ればもっといい感じになるのに…」と思っていると今成亮太に会った。

以前はファン感謝デーといえばこの男だった。ものまねを中心にしたショーマンシップぶりで盛り上げた。現役引退後の今は球団職員として、子ども向けのタイガースアカデミーで専属コーチを務めている。この日、イベント後にアカデミーの公開練習があり、甲子園に来ていた。

大山がもっと笑うようになるにはどうしたらエエんかな。そんな雑談をした。今成は「あいつはなかなか笑わないでしょう」と言ったが「まあ本塁打を打つことでしょうね。ヒットもいいけど本塁打を打てば笑いますよ」と続けた。

笑みを浮かべるから活躍できるのか。活躍するから笑えるのか。どちらが先かは正直、分からないが両方に関係性は確実にあると思う。勝って、選手も虎党も笑う姿をどれだけ見せられるか。(敬称略)

スタンドに手を振りながら場内1周する阪神ナイン(撮影・加藤哉)
スタンドに手を振りながら場内1周する阪神ナイン(撮影・加藤哉)