「島田が打ってすぐに『きょうのコラムや!』と思いました。吉兆になりましたね」。試合中、球団関係者からこんなメールが入った。島田海吏が右越え本塁打を放った直後だ。この駄文をたまに読んでいるようで、時折、感想を言ってくれる。この日はそんな内容だった。

22日の紙面で島田海吏は代走要員の争いに参加していると書いた。少しだけ再録する。島田はヤクルトの若きスラッガー村上宗隆の九州学院での4年先輩。そんな話をすると「勝っているのは年齢と足の速さだけですよ」と自虐気味に話した、という内容だ。

しかし、この日は無安打の村上を尻目に「どうだ」と言わんばかりの本塁打。当然だが、まだ代走だけの存在になるつもりはないというアピールだ。

いわゆる伏兵ということでいけば前日、自身初の満塁本塁打を放った植田海も好調だ。この日は9番中堅でスタメン出場すると2安打。試合後は指揮官・矢野燿大が報道陣に交じって質問する光景もあった。

矢野が特にひいきしているわけではないのだが、この光景には意味があると思う。失策の多さが課題のチーム状況。遊撃の守備だけに限れば植田は1番手かもしれない。以前に内野守備走塁コーチの久慈照嘉も「守りだけなら海だね」という趣旨の話をしていた。

2軍監督だった矢野もそれを知っている。打撃が成長すれば…という願いがあるだけに“矢野記者誕生”となったのかもしれない。

だが、そうなると危機感が募るのは木浪聖也、北條史也だ。オープン戦あたりまでは遊撃の定位置争いはこの2人に絞られていると受け取っていた。だがここに来ての結果で植田が打撃に自信をつけてくれば、これは分からなくなる。

木浪 大丈夫だと思っています。自信を持っていかないとね。

北條 まだまだこれからですよ。

「植田がいいぞ」というこちらのぶしつけな質問にそろって笑みを浮かべながら話した。虎党からすれば木浪のパンチ力、この日のバスターで見せたような北條のプロっぽさ、そこに植田の守備力を兼ね備えた選手がいれば、いいのだが、そううまくはいかない。

混戦から誰が抜け出すのか。あるいは併用のままシーズンを戦うのか。外野戦争への参加を狙う島田も含め、神宮の結果はなかなか面白かった。(敬称略)

ヤクルト対阪神 帰り際、矢野監督(左)から取材を受けて笑顔を見せる植田。右は島田(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 帰り際、矢野監督(左)から取材を受けて笑顔を見せる植田。右は島田(撮影・加藤哉)