沖縄最終実戦となったヤクルト戦は助っ人抜き「国産打線」での勝利だった。目立ったのは4安打の陽川尚将、途中出場で2安打の北條史也だろうか。しかし、例えばこの2人。シーズンで出番は来るのだろうか、とふと思ってしまう。

大物新人・佐藤輝明の加入でポジション争いが一気に激しくなっている。佐藤輝は左翼手、三塁手での実戦が続く。そんな折、前日27日に行われた中日戦の中継でインタビューを受けた指揮官・矢野燿大のコメントが虎党の注目を集めている。佐藤輝のポジションを聞かれたときのことだ。

「一塁はいろんなプレーが複雑になってくるのでサードかなと思っています。大山にはサードを任せたいけどチームのバランスを考えたときに大山が一塁に行くという形が一番、スムーズかな、と」

そんな趣旨だった。現実的に解釈すればこうだろうか。左翼スタメンの佐藤輝を内野に回す場合は三塁。その場合、三塁スタメンの大山は一塁に回る。このケースだろう。試合終盤に大山が一塁を守ることは昨年もあったのでそれほど違和感はないかもしれない。

だが見方を変えれば一塁・大山、三塁・佐藤輝というスタメンもあると受け取れる。これはなかなかすごい。昨年、本塁打王を争うまでに成長し、三塁守備もいい大山を外してまで新人をサードで起用するのか、ということだ。

現役時代に外野も守った矢野、現在は複数ポジション論者である。選手からすれば守備位置にこだわりはあっても、まず試合に出ることが先決という考え。これは監督のポリシーなので外側からどうこう言っても仕方がない。だが、その場合、例えば陽川、北條らの出番が減ることは十分、考えられる。本当に「守備位置が足りない」状況。これはうれしい悩みだろう。

「ポジションは競争、競争とみんな言うんだけどな。結局、最後はこちらが与えるものなんだ」。闘将・星野仙一によく聞かされた言葉だ。その意味をかみしめる日々である。

佐藤輝は公式戦では1球も打っていないし、体力面を考えても先行き不透明だ。それでも潜在能力を買って起用するのなら簡単には変えられない。その場合、キャプテンに就任した大山のプライドは…。しかもまだ見ぬ新助っ人ロハスもいる。やはり、今季、最大の注目点は「3年目矢野の決断」かもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

2月17日、一塁でノックを受ける大山
2月17日、一塁でノックを受ける大山