2年目期待の佐藤輝明、“背水の陣”でこのキャンプ奮闘する江越大賀らの活躍で中日に競り勝った阪神。「終わりよければ…」ではあるが中盤まで、そのムードは対照的だった。
生え抜きのスター立浪和義が監督として戻ってきた中日と、監督4年目の矢野燿大が今季限りでの退任を公表している阪神。指揮官の状況が対照的な両軍にあって、やはり中日の元気良さ、声出しは目立った。
阪神はレギュラー級にベテラン糸井嘉男、助っ人ロハスも入れたスタメンだったが6回までその糸井の1安打だけ。南国・沖縄ながら冷え込んだ気候のような状況だった。その要因…とまでは言わないが虎党が意気消沈するようなプレーは2回の守備か。
立浪が期待する4番石川昂弥の高く弾んだ三ゴロを大山悠輔が拾えず、失策。次の平田良介は遊ゴロで一塁に残った。続く6番木下拓也の左前への当たりを糸井がはじいてしまう。その後の連係がうまくつながらず、懸命に走った平田に一塁からの生還を許す格好になった。こういうプレーは相手は盛り上がるし、先発投手はガックリくる。
結果として勝ったし、練習試合だし。でも、やっぱり、そういうものではないだろう。先日、宜野座キャンプを視察した広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が「練習のための練習になっていないか」と指摘していたことを思い出す。
守備の緩みというか、まずい点は他にもあった。5回、1死一、二塁。京田陽太の中飛を処理した近本から遊撃小幡竜平へ球を戻す際、小幡がこれをはじいてしまう。しっかり守っていれば2死一、二塁のところが二、三塁とピンチを広げてしまった。
前日19日にあった楽天との練習試合でも1回にいきなり二塁熊谷敬宥が失策していた。野球にミスはつきもの。練習試合で出たそれをいちいち取り上げるのも、正直、どうかなと言う気もする。だけど同時に「守備が課題」と言われ続けているのに、こんな光景を当たり前のように目にしてしまうのはちょっとな…と感じるのだ。
「勝利も大事だけど全力プレーの伝統を残したい」。よく矢野はそう言う。素晴らしい理想だと思うし、それは応援している。同時に「阪神は守備が難点」という評価は、そろそろ払拭(ふっしょく)してほしいと強く思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)