意外?なところで「凡事徹底」を耳にする。この日、来月に迫ったサッカーW杯の代表メンバーが発表された。代表監督・森保一が今大会に臨む四字熟語として、上げたという。

阪神は今季、広島戦で打てず、6試合で15得点、チーム打率1割9分9厘だ。広島もそんなに打っておらず、両軍の得点が少ないカードだ。そういう面でもサッカーに似ていたりして…と思うのは関係ないけれど「凡事徹底」は虎党には言うまでもない指揮官・藤川球児が就任以来、繰り返している言葉だ。

四字熟語そのものとしては辞書にも載っていないという。以前に朝日新聞でその記事を読んだ。カー用品販売のイエローハット創業者・鍵山秀三郎が広めたというところまでは判明した様子だが球界では以前から見かける言葉でもある。

目の前のことをコツコツやることからしか物事はならないという意味だろう。野球で言えばミス、失策をしないのはもちろん、1つ1つのプレーを確実に仕留めていくことが大事ということかもしれない。

栗林良吏にまた好投され、今季初の零封負けを喫した。好投手にいい投球をされれば、そうは打てない。1回、敵失から好機をつくったものの先制できなかったことが響いた面もあるが、それも含め、栗林がよかったということだ。グラウンド外の一件でチームが落ち着かない状況の中、こんな投球を見せるのは本当にたいした男だとしか言いようがない。

「おっ」と思ったのは9回裏、1死から四球で出た高寺望夢が盗塁を決めたことだ。2点差なら普通はないプレーだろう。広島バッテリーも警戒していなかったようだ。だが意味はあったと思う。1死一塁なら併殺のおそれがある。1死二塁になれば森下翔太、佐藤輝明の2枚看板に回るのだ。実際に最後はその2人が倒れたのだが。

意味ある盗塁と書いたが同時にアウトなら目を覆う場面にもなっていたはず。勇気のいる作戦だったと思う。そこを球児に聞いた。「勝手に走ったんじゃないですか?」ととぼけたが、すぐ説明した。

「集中力高くやっていますから。相手に勝とうとするということを最後までやっていかないといけませんから」-。劣勢の中、最後まで勝負に出ていたということだ。指揮官として、これも「凡事徹底」なのかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 9回裏阪神1死一塁、一走高寺望夢は打者森下翔太のとき二盗を決める。野手勝田成(撮影・加藤哉)
阪神対広島 9回裏阪神1死一塁、一走高寺望夢は打者森下翔太のとき二盗を決める。野手勝田成(撮影・加藤哉)