南北海道大会は、北海道栄が6-1で函館大有斗を下し、3年連続の8強進出を決めた。181センチのプロ注目エース、才木海翔(3年)が9回1失点、10奪三振の完投で、夏の甲子園7度出場の難敵を倒した。

 北海道栄の才木が帽子を飛ばし、笑顔を振りまき快投した。日本ハム、巨人、広島などプロ6球団のスカウトが視察する中、最速143キロの直球を主体に10奪三振。自己最速145キロには及ばなかったが、9回1死から、最後は2者連続三振に打ち取り、軽くほほ笑んで締めくくった。「帽子が飛ぶのは、しっかり体重移動ができている証拠。チームのために投げ切れて良かった」と振り返った。

 苦い経験が生きた。昨秋全道大会準決勝の旭川実戦で8回に被弾した。6回に1点差に詰め寄り反撃ムードだったが、一気に意気消沈した。この日は2回に先制ソロを許したが「僕が表情に出すとチームの雰囲気に影響するから、笑顔で、と。秋に学んだことが生きた」。ピンチでは、振り向いて中堅・佐々木励(3年)の方を見た。「一番声をかけてくれる。自分の世界に入りすぎると空回りするので」。心を落ち着かせ、仲間の声に耳を傾け、本塁打の1点だけに抑えた。

 大阪・豊中から駆けつけた家族の前で、まずは初戦を突破した。この日は父拓也さん(41)母真理絵さん(37)弟友翔(ゆうと)君(8)がスタンドで応援。雨天順延になった前日15日には、真理絵さんから「甲子園にきいや。みんな待ってるんやから」と愛のムチが入れられた。「う、うん…と。うなずくしかできませんでした」と才木。スマイルエースの心のひもを、母の言葉がしっかりと引き締めていた。

 決勝に進出すれば、小学生時代、何度も甲子園に連れて行ってくれた大好きな祖母宮本美佐子さん(66)が応援にかけつける予定だ。「まだ通過点。お世話になったおばあちゃんに立派になったところを見せたいし、甲子園で投げるところを、地元のみんなに披露したい」。ひとつずつ勝ち上がり、念願の関西凱旋(がいせん)につなげる。【永野高輔】