第100回全国高校選手権記念大会に出場中の八戸学院光星(青森)に偉大な先輩から差し入れが届いた。06年のセンバツに出場したOBの巨人坂本勇人内野手(29)からアディダス製のTシャツが寄贈された。坂本に憧れ、徳島からやってきた武岡龍世内野手(2年)は1年春から遊撃手で先発出場。今夏の青森大会準決勝では2打席連続の3ランで一気に大ブレークした。11日の明石商(西兵庫)との1回戦では攻守に活躍し、「坂本2世」として全国に名をとどろかす。

 憧れの先輩から寄贈された黒Tシャツに袖を通すと、武岡は静かに闘志を燃やした。「あんまり坂本さんのグッズは持ってなかったので、うれしい。気が引き締まる。甲子園は夢のような舞台。チャンスで絶対に1本打ちたい」。偉大なOB坂本に憧れて、徳島から青森に渡ってつかんだ甲子園切符。聖地での戦いを前に、燃えない理由がない。

 伝統の系譜を継ぐ男だ。歴史的に光星は巨人坂本や阪神北條らの「攻撃的遊撃手」を輩出してきた。武岡はロッテ田村以来となる入学直後の4月からベンチ入り。八戸地区大会では「1番遊撃」で鮮烈デビューを飾るも、1年夏はベンチを外れた。2年春から正遊撃手に復帰し、今夏の青森大会でついに殻を破った。1年冬から取り入れたスクワットで「下半身が安定して、打撃が良くなった」。準決勝で2打席連続の3ランで、一気に大ブレーク。2番打者ながらチーム1位の12打点、同2位の打率5割で甲子園に乗り込む。

 打撃の左右は違えど、「坂本2世」と呼べるほどのポテンシャルを秘める。鉄壁の遊撃守備を誇り、成長途上の打撃には大きな伸びしろがある。仲井宗基監督(48)は「これぐらいは当たり前。もっとできる」とさらに期待する。50メートル5秒9の快足も光る。硬式野球のクラブチームに加入していた中学時代は陸上部に所属し、100メートルで県2位に輝くほどの脚力を持つ。

 大阪市内で行われた6日のシート打撃ではシャープにバットを振り抜いた。高いレベルで走攻守3拍子そろえる「坂本2世」は胸を張った。「徳島から光星に行って良かった。甲子園では攻守ともに目立てるように」。15歳で故郷徳島を旅立ち、青森での飛躍を誓った男が今、勝負の全国舞台に立つ。【高橋洋平】

 ◆武岡龍世(たけおか・りゅうせい)2001年(平13)5月28日、徳島・鴨島町(現吉野川市)生まれ。鴨島小2年から軟式野球を始め、小6からは硬式の徳島ホークスに所属し同年に全国優勝。鴨島一中1年時にはカル・リプケン少年野球世界大会日本代表に選ばれ、準優勝。178センチ、70キロ。右投げ左打ち。高校通算8本塁打。家族は両親と兄。兄の大聖捕手は系列の八戸学院大2年。