前橋育英(群馬)・恩田は膝に手をつき、中前に転がる打球を眺め続けた。「素直に負けたんだな」。143球の熱投も実らず、近江にサヨナラ負けを喫した。

 同点で迎えた9回無死満塁、ピンチで体が悲鳴を上げた。「右ふくらはぎがつった。最後までベンチに帰りたくなかったが、投げられない状態だった」。それでもマウンドは譲らず、治療のための4分間の中断を経て戻ってきた。だが、再開後初球。134キロの直球を中前に運ばれた。

 強打の近江が相手でも1歩も引かなかった。先制を許した直後の2回、負けず嫌いの性格に火が付いた。「絶対打ってやろうと思った」と自らのバットで2点適時打を放ち逆転。投球でもギアを上げ、8回までに10安打を浴びながら粘りの投球を見せた。最後に力尽きたが、荒井直樹監督(53)は「本当によくやった。それしかないです」と、172センチの小さなエースをたたえた。