昨夏の高校野球界を盛り上げた大船渡(岩手)木下大洋外野手(18)が、関西学生野球で26度(旧リーグ時代を含む)の優勝を誇る同志社大(京都)に進学することが9日までに決まった。岩手大会では決勝で花巻東に敗れたが、プロ野球ロッテ入りした佐々木朗希投手(18)と打の中心を担った高校通算28本塁打の長距離砲。大学日本一を誓うだけでなく、将来は岩手県や大船渡の産業を復興、発展させる決意も明かした。

木下が大船渡から巣立ち、関西学生リーグの強豪・同大で、さらなる飛躍に挑む。「高校では佐々木朗希がいて、ものすごく良い環境で野球が出来た。近くで見ていましたし、それを生かしてレベルアップしたい。日本一を目標に掲げますが、まずは1軍で試合に出て結果を残すこと」。

4番佐々木の次打者として「5番左翼」が定位置だった。高校通算28発のパンチ力で得点量産に貢献。2年秋は岩手県大会準決勝の盛岡大付戦で右翼席に運んだが、昨夏はホームランを打てず、大一番で実力を発揮出来なかった無力さも味わった。今冬はジム通いなどで体力強化を図るだけでなく、新打法に挑戦中。「アッパー気味のスイングの方が最大限のパワーが出せると思った」。オリックス吉田や、憧れの存在でもある西武山川の映像なども参考にしながら、大学NO・1右打者を目指す。

「大学で満足出来なかったら社会人でも野球がしたいけれど、夢もあるんです」。11年東日本大震災を経験し、故郷への思いは強い。「岩手や大船渡に帰ってきて、地元の産業だったりを盛り上げたいんです。大学では『老舗と経済』を研究したいと決めています」。経済学部進学後は野球と両立しながら、大学のある京都府内で、さまざまな伝統ある経済を学ぶ。まだまだ復興途上の岩手沿岸地域を、さらに活性化させる使命も担う。

震災から9年。「忘れてはいけないし、自分の子どもとかにも伝えていかないといけない。同じことが起きた時に1人でも多くの人が助からないと」。昨夏に全国で一番注目を浴びた大船渡の主砲は、野球でも勉強でも貢献する野心に満ちている。

◆木下大洋(きのした・たいよう)2001年(平13)6月20日生まれ、岩手・大船渡市出身。大船渡北小3年時に大船渡北野球スポーツ少年団で野球を開始。大船渡中では軟式野球部に所属し、地域選抜チーム「オール気仙」では佐々木朗希らと東北大会準優勝。大船渡では2年秋からベンチ入り。179センチ、93キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄2人、祖父母。趣味は寺院巡り。